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「さみしさの周波数」乙一
2006 / 11 / 24 ( Fri ) 10:22:59
『未来予報~あした、晴れればいい』、『手を握る泥棒の物語』、『フィルムの中の少女』、『失はれた物語』の4編収録。『手を握る…』と『失はれた物語』はほかの短編集で読んだことがありました。…ちょっと損した気分(^^;)

★★☆☆☆

『未来予報~あした、晴れればいい』

僕は、清水のことがずっと気になっている。
なぜなら、未来予報のできる古寺が、「おまえたち二人、どちらかが死ななければ、いつか結婚する」と言ったから。
小学生の頃の話など、気にしなければいいと思うのに、なぜか気になる僕。けれどもそれぞれの人生は交錯することなく続いていく。そして二十歳。



僕たちの間には言葉で表現できる「関係」は存在しなかった。ただ透明な川が二人の間を隔てて流れているように、あるような、ないような距離を保っていた。


淡い初恋を大切に胸に秘めている二人の物語を、乙一が書いたらこうなりました、みたいなお話です。
スーッと胸になじみ、どこか懐かしささえ感じます。

『手を握る泥棒の物語』

温泉宿に投宿している伯母のバッグから宝石を盗むため、壁に穴をあけた俺。
穴に手を突っ込んで、握ったのは、なんと女の人の手だった。



なかなかスリリング。
まぁ、再読だったから、ドキドキ感はあまりなかったけど。
おもしろい設定だと思います。

『フィルムの中の少女』
映画研究会所属の私は、部室の隅で古い8ミリフィルムを見つける。
そこに写っていた少女の後ろ姿は、見るたびに少しずつこちらを振り向く。

作家の「先生」に私が話して聞かせるスタイルです。
先生がフィルムに写っている少女とどんな関係があるのか…。ふ~ん。。。何かちょっと肩すかしでした。
幾ら何でも、「私」の推理はちょっと無理があるような気がします。

『失はれた物語』
これ、以前に読んだときには、『失はれる物語』というタイトルでした。
タイトル変更に関して、そのとき乙一があと書きで何か言ってたような気がしますが、忘れました('◇')ゞ
ちょっとしたこだわりがあったようです。

交通事故で植物状態となってしまった主人公。
右腕のひじから先以外の感覚が失われた主人公は、
暗闇と無音の世界の中、唯一残った皮膚感覚でのみ、妻の存在を感じる。



主人公の生きている世界、恐いです。
考えることだけしか残されていない。何も聞こえない、何も見えない、何も動かせない。恐怖を感じます。
残酷だ、と思います。
いっそのこと狂った方がましだという主人公の独白に、
リアリティーを感じます。
そんな中での主人公の選択は、そうかぁ。。。という感じ。
すごく分かるけど、悲しいね。
優しいけど、さみしいね。

主人公の諦念が、透明感をもって伝わってきます。
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乙一 TB:1 CM:0 admin page top↑
「失踪HOLIDAY」乙一
2006 / 11 / 21 ( Tue ) 09:35:11
『失踪HOLIDAY』と『しあわせは子猫のかたち』の2作収録。
『しあわせは…』は以前にほかの短編集で読んだことがありました。
これ、好き♪
こんな形で再読できて、うれしかったです。

★★★★☆

『しあわせは子猫のかたち』

大学入学と同時に東京に出てくるに当たり、伯父さんの所有する古い家に住むことになったぼく。
ここには白い子猫が住んでいた。
前の借り主の飼い猫らしい。
前の借り主、雪村サキは、あろうことかこの家の玄関先で殺されていた。
いまだに雪村の気配を感じるぼく。
一人っきりで、暗い部屋にひっそりと暮らしたかったぼくだけど、いつしか朝日の好きな雪村と白い子猫との生活になじんでいく。



孤独な青年が、お日さまのように暖かい雪村の人柄(?)に、だんだん心溶けていく、そんなお話。
こういうお話を書かせると、乙一はうまいなぁと思います。
どこかおとぎ話っぽい世界なんだけど、けれども厳しい現実がすぐ隣りにあるという世界。
孤独な青年の絶望感が、シンシンと伝わってきます。
その青臭さや透明感が、どこか懐かしく甘酸っぱくも思えます。

雪村が最後にぼくに宛てた手紙。
同封した写真を見て。きみはいい顔している。際限なく広がるこの美しい世界の、きみだってその一部なんだ。わたしが心から好きになったものの一つじゃないか。

「しあわせ」ってやわらかい温もりにあふれているのね。
なんか、そんなことを感じます。

『失踪HOLIDAY』

わたし、菅原ナオは、パパと大きなお屋敷に住んでいる。
パパはママが再婚した人で、ママはもう死んでしまった。
だから私は、このお屋敷にいてもいいものかどうか、いつもどこかで不安を感じている。
中2になって、パパはキョウコと再婚した。
キョウコとバトルを繰り広げる日々。
わたしは衝動的に家出をし、使用人のクニコの部屋に転がり込む。
パパの気持ちを確かめたくて、キョウコを困らせてやりたくて、わたしは偽装誘拐を思いつく。



さらっと読んで、さらっと忘れそうなお話です('◇')ゞ
わがままで生意気なお嬢様の気丈な振る舞いから、健気ではかなげな、不安に揺れている寄る辺ない姿が透けて見えます。
ナオ、ホントは素直でいい子なんだよね。

【こちらの記事も♪】
苗坊の読書日記
乙一 TB:1 CM:4 admin page top↑
「階段」乙一
2006 / 11 / 13 ( Mon ) 10:27:34
これも『青に捧げる悪夢』の収録作品。
乙一ってやっぱりすごい。。。。うなってしまいます。

★★★★☆

父親に虐待されている姉妹、私と妹のお話です。
妹の梢は、家の階段が恐くて降りられなかった。
そろりそろりと降りる梢をいたぶる父。
何も起こっていないかのようにふるまう母。
庇いたくても恐怖で体が動かない私。
学校に知られまいとする妹。

短編なのに、ここまで描ききられると、読んでいて本当にきつい。
この家族の力関係、相対関係がとてもリアルで、
それだけでも十分読み応えがあります。

虐待などの大きな傷を過去に負ってもなお生き延びた人に対して、サバイバーという言い方があります。
なぜ戦争も内乱もない今の日本に、餓死者が道端にごろごろしていた平安時代でもない今の日本に、サバイバルしなきゃいけない子がいなきゃいけないのか。
悔しくて、悲しくて、涙が出そうになります。
だけど私の涙など何の足しにもならないので、ぐっと奥歯を噛みしめてしまうのです。

この作品のすごいところは、身体表現により感情が表現されているところじゃないかな。
ただ「恐い」と書かれるより、ずっとずっと彼女たちの恐怖に共感できます。

身構えていてさえなお、静寂を破って聞こえる一発目の怒声は、心臓が止まって胃の縮むような衝撃があった。胴体の中に浮かんでいる内臓のありかがはっきりとわかり、心臓だけを浮かばせた器であることを感じた。

乙一の作品すべてがそうなのか、そうでないのか、今まで気にしていなかったけど、
切ない系とも呼ばれる作品でも、その絶望や孤独を身体の痛みや反応で表現していたように思います。
こういうのを感受性というのかな。

乙一。。。すごい。。。
乙一 TB:1 CM:2 admin page top↑
「失はれる物語」
2006 / 02 / 21 ( Tue ) 13:43:54
以前に読んだ、「Calling you」「傷」を含む6編からなる短編集です。
孤独の暗闇の中から、か細い光が弱々しく見えてくる。
その弱々しい光にあたたかさを感じて、胸が締めつけられる世界です。

★★★★☆

『Calling you』『幸せは子猫のかたち』『暗いところで待ち合わせ』は三部作だと、あと書きで作者自身が書いています。
孤独だった主人公の寒さやさみしさ。
人を感じられることのほのかなあたたかさや明るさ。
だれかがそばにいるだけで、世界が変わって見える。
胸に刺さったままになっている小さな棘がうずくような、
そんな繊細さと若さとほろ苦さを感じます。

乙一 TB:2 CM:9 admin page top↑
「きみにしか聞こえない」
2006 / 01 / 04 ( Wed ) 15:25:22
白「乙一」の短編集。
孤独、絶望、死の空気を剥がした先の希望の光が描かれています。
触れると砕けてしまいそうな、そして触れたほうも怪我をしそうな、脆く、だけど美しい繊細なガラス細工のような作品でした。

★★★★☆

「Calling You」

 孤独な毎日を送るリョウ。彼女はさみしくて、さみしくて、自分の頭にケイタイを描きます。そのケイタイに鳴った1本の電話。シンヤからの電話でした。

 集団の中で1人浮いてしまっているリョウ。

 「教室では常に、だれにも話しかけられないことなんて気にしていない、というふうに平気な顔を装った。そうしているうちに、本当に平気になれていたら、どんなに良かったことか。」
 
 リョウの孤独感が胸に刺さります。だからリョウとシンヤの頭の中のケイタイのやりとりが、とても愛おしく、うれしく、暖かく思えます。
人はだれかと「つながっている」感が持てれば、幸せを感じることもできるのよね。
だけどな~、乙一だもの。このままふんわり暖かいまま終わるとは思えないぞ。。。。
ラストが近づくにつれて、ドキドキします。
あ~、そう来たか。。。
泣きそうな気持ちになりました。

「傷ーKIZ/KIDSー」

 粗暴が原因で特殊学級に入れられたオレ。そこに口をきかない少年、アサトが転入してきた。アサトには不思議な能力があった。人の傷を自分の体に移すことのできる能力。自分に移した傷を人に移し替えることのできる能力。

 「オレらはひどい目にあった。不幸なことを避ける力は、オレらにはなかった。…でも、きっとみんな同じように、苦しいことに耐えられなくて、そうしてしまった。そんなこと、あってはいけないはずだけど、どうしても耐えられなかったのだ。
 だれも傷つかない世界が、早くやってくるといい。」

 「オレ」がアサトを通じて見た世界の崇高なこと。
 アサトの行為はキリストにも似ていると感じました。
 孤独と絶望と憎悪と死の空気から1歩抜け出すことのできた「オレ」の未来を、私も信じられそうでした。2人に幸いあれと願います。

「華歌」
 病院の裏庭にひっそりと咲く花。少女の顔を持った花は優しいハミングを繰り返す。

 ミスリードを誘う文章。
 どう見てもわざとですね。
 だけど、どうしてそうしなければいけなかったのか、その必然性が分からない。
 あっ違う!と分かっても、「華歌」の世界は何もひっくり返りません。
 う~ん、これはただの作者のいたずら?
 ちょっとやってみたかったんだと笑う乙一の姿が目に浮かんだのでした。
乙一 TB:4 CM:8 admin page top↑
「暗いところで待ち合わせ」
2005 / 08 / 31 ( Wed ) 20:35:48
孤独の寒さとこわごわ伸ばした手の先のぬくもりに、
胸がギュッとしめつけられるような作品でした。

★★★★★

中途失明者のミチルは、線路の脇の古い家で、静かに植物のように暮らしていた。
家の中に漂う気配。そこには警察に追われているアキヒロがひっそりうずくまっていた。
外界が恐いミチルと人が苦手なアキヒロの奇妙な共同生活が、
2人の心をそっと溶かしていく。

静かな緊迫感、育まれる不思議な落ち着き、すぐに壊れてしまいそうな臆病な信頼感。。。
まるで野良猫が人になれるまでの過程のように
2人の心がびくびくと、こわごわと少しずつ動いてさまを
繊細に描いた作品だと思います。

息苦しさも、胸の痛さも、泣きたいほどの暖かさも、
素直に感じることのできる作品でした。
乙一 TB:3 CM:8 admin page top↑
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