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「弥勒」篠田節子
2005 / 07 / 15 ( Fri ) 13:02:05
自分の持っている価値観がぐらぐらと揺さぶられる本。
ハードな世界が広がっています。

★★★★★

仏教美術に始まるこの作品、そのまま仏教美術の物語に突入するのかと思っていたら、そんな平和な物語ではありませんでした。
インドと中国の間に位置する小国パスキム。独自の文化と信仰を持ち、人々は豊かな生活を享受している。。。はずだったのに、突然起きたクーデター。破壊されているであろう仏教美術に思いを寄せる永岡は、パスキムに単身潜入する。革命軍に捉えられた永岡の生活体験は、彼の価値観を根底から揺り動かす。
主人公永岡が、美とは、信仰とは、幸せとは、生きることとは、死ぬこととは、と思考を再構築せずにはいられない姿に圧倒されます。

人間の命の尊さということが日本では当たり前に言われていますが、それが通用する世界はほんの一握りでしかないのではないかと思い知らされます。

この作品の中では、急進的な革命の末路なども描かれているのですが、
革命を起こす側の人間が真摯な思いで革命を起こしているという部分もきちんと描かれているために、
余計におろかというか、浅はかというか、
人間の器の限界みたいなものを思いました。

人間の目は前についている。
だから物事の一面しかとらえられないという言葉を
ちょっと思い出しました。

この間、テレビでブータンが紹介されていました。
民族衣装の着用が義務づけられていること、
敬虔な仏教徒が多いこと、
田舎の人も立派な3階建ての家に住んでいること
なんかが紹介されていました。

この国がパスキムのモデルだったのかなと思いました。
と同時に、
この国であのような悲劇が起きないようにと思わず願ってしまいました。
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