FC2ブログ
「月神の浅き夢」柴田よしき
2005 / 08 / 10 ( Wed ) 17:46:28
RIKOシリーズ第3弾。
この本をもって緑子に会えなくなるかと思うと、読み終わるのが名残惜しくて仕方ありませんでした。

★★★★★

緑子、安藤明彦、高須義久、麻生、そして山内練。
そこまで描かなくてもというぐらい、このシリーズは何でもありの世界でした。
けれどもその中で、迷いながら、くじけそうになりながら、自分の足で立とうとする緑子の存在が光っていました。

今回、緑子は刑事をやめることを考えています。

理由その1は、家庭と仕事の両立の難しさ。
ようやくささやかな幸せを手に入れた緑子。彼女がそれを守りたいと願うことは当然のことだと思います。
経済的な理由付けもなくなり、子供との大事な時間を奪われ、それでも刑事を続ける理由を、緑子は自分の中に見出せなくなっているのです。

これ、共稼ぎで仕事を続けている女性なら、1度は必ず悶々と思い悩むことだと思います。
その結論の出し方は人それぞれであり、またどれが正しいという道はありません。だからこそ、そこに「人となり」が反映されるものなのだと思います。

理由その2は、刑事という職業そのものにまとわりつく疑問。
人は人を裁くことができるのかという大きな命題。
そこに、この作品の骨となっている冤罪が絡みます。
冤罪によって人生を狂わされた人々の痛切な思いが怒濤のように押し寄せてきます。

人は人を裁くことができない。
けれども裁かなければ社会が成り立たない。
この矛盾したシステムの最前線の人たちは、誠実に仕事をしていればしているほど、緑子のようにその壁にぶち当たるのでしょう。
そこでどういう答えを導き出すか、それもその「人となり」だと思うのですが、少なくとも矛盾しているということを感じるだけの感受性は、司法にかかわるすべての人に持っていてほしいと思いました。

緑子が選んだ道。
それは、すべてのことを「ごっくんと」飲み込み、常に自分に正直であろうと真摯に生きてきた彼女にふさわしいものだと思いました。

これからの彼女に幸多いことを願います。

緑子に会えてよかったです。
スポンサーサイト



柴田よしき TB:1 CM:2 admin page top↑
* HOME *