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「照柿」高村薫
2005 / 09 / 11 ( Sun ) 13:18:44
高村さんは難しいと思い込み、今まで避けてきましたが、
何ともったいないことをしていたのだろうと思っています。

★★★★★

第1章を読みながら、私は、『高村さんは、その人がまだ言葉にできない「何か」も、一瞬の心の揺れなんかも、すべて言葉で並べてみようとしています。』と書きました

これは全編通して言えることであり、この作品の大きな魅力になっています。

全編、とにかく暑いです。
工場の暑さ、アスファルトの暑さ、etc.etc…容赦のない暑さが、
執拗に出てくる臙脂色(えんじいろ)のイメージと相まって、
とにかくうだるような救いのない暑さです。

その中で、野田達夫が少しずつ壊れていく。
この描写がまた圧巻です。
本人に聞いたら、多分「よく分からない」としか答えようのないであろう心の動きを丁寧に丁寧に描きます。
この執拗なまでの内面の描写によって、
読者は、「どうしてそんなばかなことを」としか思えないような行為に至るまでの彼を、
息苦しく見つめることになるのです。

もう一人の主人公、合田雄一郎もまた然り。
こちらは、今までにない感情を持て余しながら、
今までの自分を省みる、その内省の道が痛々しく迫ります。
そこまで自分を追い詰めなくても、と思えるほどに、
その姿は厳しくて妥協がなく、それがもの悲しいです。

そして筆がそれぞれの無意識層にまで及ぶと、
2人の魂の存在が、ゴロリと手触り悪く確かな重みで感じられます。

手紙の前のラストの場面は、だからこそ激しく胸揺さぶられます。

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