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「連鎖」真保裕一
2006 / 06 / 21 ( Wed ) 18:07:53
真保裕一デビュー作であり、そして江戸川乱歩賞受賞作品です。

★★★☆☆

食品検査官羽川は、かつての親友竹脇の妻と不倫した。
それを知った竹脇は自殺未遂を企てた。
竹脇は本当に自殺しようとしていたのか。
羽川は真相を探る。

共産圏、ココム、チェルノブイリ、放射能…舞台はとても大きいのですが、華やかさはありません。小粒な推理小説…だっだと思います。
小粒ですが、羽川が1歩1歩真実に近づいていく過程に、出会いあり、アクションあり、裏切りあり、ひっかけあり。おもしろかったです。
ラストはとてもハートフル。

この作家さんは、いつでもよく調べて書く作家さんですね。
だからこそ、の臨場感が、作品をひっぱる原動力になっていると思います。

共産圏やココムなど、15年前の作品ならではの「古さ」も確かにあります。ここ15年で世界の情勢は驚くほど変わっているのですね。これから15年先の世界は、どんな変化を遂げているのだろう。ちょっと恐い気がします。

世界はこんなにも変わってしまったのに、国(厚生労働省)はこの15年で全然変わっていないのでは…という思いも、一方で持ちます。
役所は線引きをするところという羽川の同僚の言葉。
国民の安全を守るという意識が希薄な感じを受けてしまいます。
「疑わしきは罰せず」の原則がまかり通るから、規制が後手後手に回るのではないかと感じます。
線引きをして、枠外だったものの行き先をチェックする機関もない事実。この辺は、現在少しは改革されているのでしょうか。是非とも知りたいところです。

そんな体質の組織の中にも、羽川や高木のような問題意識の高い人物がいるのですよね。彼らにこそ偉くなってもらいたいものだと思います。
高木…私は期待していたのだよ。

マスメディアによる食品汚染キャンペーン。
竹脇が体を張った記事なのに、この作品では結局引っかき回すだけ引っかき回して終わってしまったことが残念です。

世間に物議をかもして、結果、1つの会社が傾き、1つの家族を不幸にした。
訴えたかったのは、○○の肉は食べるのをやめようとか、そういうことじゃないのにね。報道を受け取る側は自分に身近なほうに反応するものですね。自身を鑑みて思います。
筆の力は個人の幸せを奪う程度には強いけれど、元凶を断ち切るまでには至らないのでしょうか。1回限りのキャンペーンではなく、地道で粘り強い報道が必要なのかもしれません。

この作品、食品汚染のことを世間に訴えたくて書いたわけではないと作者はおっしゃっていますが、
ただのネタ(!)で、ここまで描き込むなんて。
やはり真保裕一、ただ者じゃないぞと思ったのでした。
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