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「階段」乙一
2006 / 11 / 13 ( Mon ) 10:27:34
これも『青に捧げる悪夢』の収録作品。
乙一ってやっぱりすごい。。。。うなってしまいます。

★★★★☆

父親に虐待されている姉妹、私と妹のお話です。
妹の梢は、家の階段が恐くて降りられなかった。
そろりそろりと降りる梢をいたぶる父。
何も起こっていないかのようにふるまう母。
庇いたくても恐怖で体が動かない私。
学校に知られまいとする妹。

短編なのに、ここまで描ききられると、読んでいて本当にきつい。
この家族の力関係、相対関係がとてもリアルで、
それだけでも十分読み応えがあります。

虐待などの大きな傷を過去に負ってもなお生き延びた人に対して、サバイバーという言い方があります。
なぜ戦争も内乱もない今の日本に、餓死者が道端にごろごろしていた平安時代でもない今の日本に、サバイバルしなきゃいけない子がいなきゃいけないのか。
悔しくて、悲しくて、涙が出そうになります。
だけど私の涙など何の足しにもならないので、ぐっと奥歯を噛みしめてしまうのです。

この作品のすごいところは、身体表現により感情が表現されているところじゃないかな。
ただ「恐い」と書かれるより、ずっとずっと彼女たちの恐怖に共感できます。

身構えていてさえなお、静寂を破って聞こえる一発目の怒声は、心臓が止まって胃の縮むような衝撃があった。胴体の中に浮かんでいる内臓のありかがはっきりとわかり、心臓だけを浮かばせた器であることを感じた。

乙一の作品すべてがそうなのか、そうでないのか、今まで気にしていなかったけど、
切ない系とも呼ばれる作品でも、その絶望や孤独を身体の痛みや反応で表現していたように思います。
こういうのを感受性というのかな。

乙一。。。すごい。。。
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