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「ジェノサイド」 高野和明
2011 / 07 / 24 ( Sun ) 16:44:00
とても完成度の高い作品だった気がします。
圧倒されました。 ★★★★★
ここ最近,私がつらつらと考え続けている「ヒトの本来的な性格」や「ヒトの限界」を真正面から取り上げた作品でした。 あまりにタイミングがよすぎて,ちょっとコワイくらいでした。 ![]() ![]() ![]() ![]() ![]() ![]() ![]() ![]() ![]() ![]() ![]() ![]() 場面転換の早さ,それに伴うスピード感。 血肉が通っている登場人物。 最近の高野さんの作品はスピリチュアルな優しい雰囲気が多かったようにも思いますが,私の好きな高野さんが戻ってきたような気がしました。 さて作品は。 創薬。 傭兵。 家族愛や隣人愛。 民族紛争。虐殺。 少年兵。 核兵器のボタン。 ホモサピエンスの残虐性。 人類滅亡の可能性。 次世代人類の能力。 多くのことが描き込まれています。 それでも風呂敷を広げすぎた感もなく, すべてがきっちりまとまる構成力。 どの切り口も深く鋭く,ぐいぐいと引き込まれます。 傭兵イエーガーの息子の病気,肺胞上皮細胞硬化症も, 人類滅亡について考察したハインズマン・レポートも, 高野さんの創作だとか。 いかにも「ありそう」なリアリティにあふれていました。 リアリティといえば次世代人類。 第4次元の理解 複雑な全体をとっさに把握すること 第六感の獲得 無限に発展した道徳意識の保有 我々の悟性には不可解な精神的特質の所有 …3個目以降,具体的に思い浮かべることは出来ませんが。 最近,虚数だの何だのヘンな方向に走っていた私も, 確かに,第4次元の理解や複雑系の理解が可能な頭脳こそが 次世代なんだろうなと納得できました。 現世代人類が数の抽象化(1個と1人は同じ「1」)を簡単に理解できるように, 次世代人類は現世代人類の中でも天才的に頭のよい人たちが考えた虚数の世界を,いとも簡単に理解できたりするんだろうな。 光は波であり同時に粒である…なんてこと,当たり前のことのように実感できて, 素数の並び方もごく当然のことのように理解できて。 1段階進化した人類の能力の位置づけが, 私にはストンと納得できるものになっていたことに, 何だかちょっとゾクッとしました。
というハインズマン・レポートは,悲しいけれど的を射ていると思います。 異質なものを徹底的に排除する方向に走ることは, ヒトの本質的な性なのかもしれません。 けれども作者さんは,そこで悲観することなく,
と若き科学者・研人に語らせることによって, ひと筋の光明を示しています。 …私は正直なところ,新生人類が地球を支配したほうが, ジョン・レノンの夢想した世界になるのではないかと思えて仕方ないのだけれど。 でもまぁ現実は,そんなに都合よく新生人類が現れるわけでもなく。 私たちが自分たちのこととして,ヒトの能力の限界や残虐性を謙虚に受け止め,その上でより質のよいヒトになるべく何とか頑張っていくしかないんだろうな。研人のように。 …頑張るって,何を頑張ればいいのかわからないけど。 作品中,韓国人の気質として「情(ジョン)」が紹介されていました。 日本語の情(ジョウ)とは違うもの。 「人と人とを結びつけてしまう強い力だよ。僕たちは,一度でも関わった相手とは,好き嫌いとは関係なく「ジョン」で結びついてしまうんだ」 「「ジョン」は厄介でもあるんだ。どんなに嫌な相手とも「ジョン」で繋がってしまうから。つまり僕たちは,他人を百パーセント拒絶することができないんだ」 「日本よりも韓国のほうが,人と人との距離が近いような気がする」 という韓国人留学生・正勲の話は,分かったような分からないような…でした。 正勲の言うように,「言葉っていうのは,言葉が指しているものを知っていないと理解できない」ものであり, 研人の考えたように,「分からない人には,いくら説明しても分かってもらえない。それが,その人の理解できる世界の限界」なのでしょうね。 少しでも理解できる世界を広げるためには, 多くのものを見聞きし,先入観に惑わされずに感じることが必要なんだろうなと, それが,ヒトの苦手とする「(住む世界の違う者に対する)他者理解」につながるのかもしれないなと思ったのでした。 …ちょっと作品から離れた感想ではありますが。 ともあれこの作品では, 偶然とはいえ, 「エイラ」「ニュートン」「豆腐小僧」の集大成としてドンピシャの, なかなか得難い読書体験ができたのでした。 スポンサーサイト
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著者:高野和明
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治安の悪化するイラクの地で活動する傭兵のイエーガー。難病を抱え、間もなくその生命を終えようとする息子の治療費が欲しい彼に、極... 新・たこの感想文【2011/10/19 20:28】
北朝鮮の内情が乏しい情報なりにくりかえし報道される。
死の影におびえる子供たちの映像が胸をうつ。
ふだんは知識として感情の奥にしまいこまれていた、できれば意識しないで済ませようとしていた実態だ。
先日読んだ「毛沢東の大飢饉」に似た、人災ともいえる飢餓か... 梟通信~ホンの戯言【2012/02/15 10:08】
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