2005/10/18
「マークスの山」文庫版 高村薫
ごく普通に読むのとは、また別の味わいがありました。
★★★★☆
ハードカバー版と文庫版、これほどまでに違っているとは。。。
まるで同じ脚本を、違う役者さんと演出家で演じ直された舞台を見ているようでした。
文庫版では、マークスの内面がより詳しく描かれています。
そしてその代わりに、その異常性に苦悩する水沢の姿や、
真知子のそばで安堵する水沢の姿が、ハードカバーより控え目に描かれています。
そのため私は、ハードカバーでは大きく心を揺さぶられたマークスが、1人の理解不能な異常者にしか思えませんでした。
真知子の彼に対する愛情や、読者の彼に対する同情を、
そんなに甘いものではないと作者は拒否したかったのでしょうか。
それとも、反社会的な行動に走るマークスへのまなざしをあえて突き放してみることで、
もう一人の主人公、合田に読者の目をひきつけたかったのでしょうか。
作者の意図がどこにあるのか、思わず探りたくなります。
ハードカバーでは「本格的警察小説の誕生」と書かれた惹句が、
文庫では「警察小説の最高峰」となっています。
この違いは、そのまま両者の違いとも受け取れます。
より「警察小説」らしくなったというのでしょうか、
文庫では組織に属する者としての合田刑事の葛藤、自己嫌悪、いらだち、自己防衛などがより鮮明に描かれています。
また組織内の上層部の意思や現場の意思、組織外からの圧力などが、
よりはっきり明確に描かれていると思います。
そのため、より骨太に、社会性のある物語に再構成されているように思います。
ミステリーとしても、やはり加筆訂正しただけあって、
文庫のほうが無理もなく、完成度が高くなっていると思います。
ちょっとした「そんな捜査、あり得ないだろう」という強引なストーリー展開が、うまく修正されていたと思います。
正直言って私は、修正されて初めて、そういえばハードカバーの展開は少し強引、あるいは都合がよすぎたかもと思ったのですが。
また、ハードカバーでの殺しのシーンが文庫ではカットされていたり、
マークスの異常性について、特定の病気を連想させるような語彙を極力抑えていたり、
随所で気配りが感じられます。
練られているものにはそれだけのものが確かにあるのだと
思わざるを得ませんでした。。。 けれども。。。。
完成度が低くても、分かりにくくても、気配りが足りなくても、それでもなお私はハードカバーのほうが好きです。
合田刑事のドロドロと形をなさない情動や、
マークスではない水沢の哀切や、
真知子の説明しがたい愛の形が、
生身の人間として迫ってくるハードカバーのほうが好きです。
荒削りであるがためのエネルギーは、
私を捉えて放してはくれませんでした。
改めて作品の完成度と私の満足度が違うことを知ることができ、
読書の不思議を感じています。
いい時間が持てたなと思っています。
★★★★☆
ハードカバー版と文庫版、これほどまでに違っているとは。。。
まるで同じ脚本を、違う役者さんと演出家で演じ直された舞台を見ているようでした。
文庫版では、マークスの内面がより詳しく描かれています。
そしてその代わりに、その異常性に苦悩する水沢の姿や、
真知子のそばで安堵する水沢の姿が、ハードカバーより控え目に描かれています。
そのため私は、ハードカバーでは大きく心を揺さぶられたマークスが、1人の理解不能な異常者にしか思えませんでした。
真知子の彼に対する愛情や、読者の彼に対する同情を、
そんなに甘いものではないと作者は拒否したかったのでしょうか。
それとも、反社会的な行動に走るマークスへのまなざしをあえて突き放してみることで、
もう一人の主人公、合田に読者の目をひきつけたかったのでしょうか。
作者の意図がどこにあるのか、思わず探りたくなります。
ハードカバーでは「本格的警察小説の誕生」と書かれた惹句が、
文庫では「警察小説の最高峰」となっています。
この違いは、そのまま両者の違いとも受け取れます。
より「警察小説」らしくなったというのでしょうか、
文庫では組織に属する者としての合田刑事の葛藤、自己嫌悪、いらだち、自己防衛などがより鮮明に描かれています。
また組織内の上層部の意思や現場の意思、組織外からの圧力などが、
よりはっきり明確に描かれていると思います。
そのため、より骨太に、社会性のある物語に再構成されているように思います。
ミステリーとしても、やはり加筆訂正しただけあって、
文庫のほうが無理もなく、完成度が高くなっていると思います。
ちょっとした「そんな捜査、あり得ないだろう」という強引なストーリー展開が、うまく修正されていたと思います。
正直言って私は、修正されて初めて、そういえばハードカバーの展開は少し強引、あるいは都合がよすぎたかもと思ったのですが。
また、ハードカバーでの殺しのシーンが文庫ではカットされていたり、
マークスの異常性について、特定の病気を連想させるような語彙を極力抑えていたり、
随所で気配りが感じられます。
練られているものにはそれだけのものが確かにあるのだと
思わざるを得ませんでした。。。 けれども。。。。
完成度が低くても、分かりにくくても、気配りが足りなくても、それでもなお私はハードカバーのほうが好きです。
合田刑事のドロドロと形をなさない情動や、
マークスではない水沢の哀切や、
真知子の説明しがたい愛の形が、
生身の人間として迫ってくるハードカバーのほうが好きです。
荒削りであるがためのエネルギーは、
私を捉えて放してはくれませんでした。
改めて作品の完成度と私の満足度が違うことを知ることができ、
読書の不思議を感じています。
いい時間が持てたなと思っています。





>「マークスの山」文庫版 高村薫
まだ未読の「照柿」とかも文庫本になると変わるのかなぁ。
早く文庫になって欲しいです^^
あ!「下妻」の第2弾は古本屋にはなかったです。
書店ではありましたが、1400円は出せずに。
これも文庫になるの待ちます♪
>「マークスの山」文庫版 高村薫
私の家の近くでは、高村さんの本はハードカバーも文庫も、100円で売ってたよ。
文庫は上下2冊だったから、かえって高かったのだ
でねちゃんちの近くでも、売ってるといいね
下妻、私も1400円は出せないよぉ。
安くて売ってるといいね。
>「マークスの山」文庫版 高村薫
すごいよ そらさん!
ここまで わかりやすく違いを書いてくれて すばらしい!
わたしは ハードカバー読んで2年後くらいに 文庫読んだ。
マークスに対する思い入れは 合田よりあったので 文庫のマークスには 少し悲しくなりました。
>「マークスの山」文庫版 高村薫
ハードカバーでは東南壁ルートを文庫本では北壁ルートを征服したって感じですかね。
それにしても短期間で2回登頂は凄い。凄すぎる。
>ハードカバー版と文庫版、これほどまでに違っているとは。。。
へえー、そんなに違うことってあるんですね。
今後はマークスの山について語るときにはハードカバー版か
文庫版か区別しないといけないのかも。
映画でも、1つの作品で特別版・完全版・ディレクターズカット版とかの複数バージョンがあったりしますね。私は原則として最初に封切りされた版で評価したいなあ。
でも、マークスであれば文庫版に興味大あり!
>「マークスの山」文庫版 高村薫
私も両方呼んだのですが、その間の年数が長かったので自分の経験が加わったせいか、文庫版のほうが高村自身の心境の変化が自分の社会観と近づいたような気がしました。
TBをさせていただきます。
>「マークスの山」文庫版 高村薫
>「マークスの山」文庫版 高村薫
私は文庫バージョンだけしか読んでいないので、
>マークスが、1人の理解不能な異常者にしか思えませんでした。
という感想そのものでした。
ハードカバー挑戦はもう少しほとぼりがさめてから…かな(笑)。
>「マークスの山」文庫版 高村薫
地震、大丈夫でしたか?
>マークスに対する思い入れは 合田よりあったので 文庫のマークスには 少し悲しくなりました。
うん、分かるな〜。でも2年経ってその違いが分かるなんて、すごいっ
それだけ印象深かったんでしょうね、ハードカバーのマークス。
私も、思い出すと切なくなる人物になりそうです。
>「マークスの山」文庫版 高村薫
勢いってやつですかね〜。
自分の記憶力にも自信がないから、
一気に読んでよかったかもと思います。
そのほうが忘れていない分、違いが楽しめたような気もするし。
文庫版、きっと組織の中で根を張って生きているサラリーマンの方とか、そういう人のほうが共感できる部分、大きいと思います。なんかそういう社会性を文庫のほうには感じました。
>文庫版に興味大あり!
よかったら、北壁ルートもお楽しみください
>「マークスの山」文庫版 高村薫
TB、せっかくだったのに、FC2は何を拗ねているんでしょうね〜
>文庫版のほうが高村自身の心境の変化が自分の社会観と近づいたような気がしました。
その辺の記事、拝読しました。文庫のラスト、えっ!?
と思ったのですが、(文庫のほうにこそ、ハードカバーでは不要に思われたラストが必要だったような気がしたのですが)なるほどね〜と思いました。
年月がたってから読んでみるのも、また楽し♪ですね。
>「マークスの山」文庫版 高村薫
>ハードカバー挑戦はもう少しほとぼりがさめてから…かな(笑)。
ゆっくり体力回復に努めてください
私も「李歐」を読むまでにはまだ時間がかかりそうです。