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「壬生義士伝」
2005 / 11 / 22 ( Tue ) 23:33:56
主人公、吉村貫一郎の独白部、南部なまりが出てくると、潰れそうに胸が苦しくなりました。まるで条件反射のように。

★★★★☆

新撰組で名を馳せた吉村貫一郎。彼はただ、妻と子供を守りたくて脱藩した。そしてただ、殺されたくなくて人を斬った。その代償としてもらった金銭を残らず故郷に暮らす妻子に送った。守銭奴といわれ嘲られた彼は、ただただ妻子のために命を捧げた。

文庫本の上下巻、途中で一息ついてしまったら、先を読むのが恐くなってしまって、少し寝かせておりました。
吉村の生き様が切なくて。
おのれの義に従った生き方が尊すぎて、苦しくて。
彼の最期までつき合うのに、少し勇気が要りました。

それに。。。。(苦笑)
この作品、吉村の独白部分と、大正時代になってからの聞き語りの部分と、2つの時代が交互に出てきます。
これ、私はとても読みづらかった。
吉村の世界にのめり込めないような、そんな感じがありました。
こういう構成を文庫解説の久世光彦は「巧い」と評していたけれど、
もっと正攻法でいったほうがうれしかったかなと思います。
吉村の独白の後に、いきなりべらんめえでしゃべられると、何だか自分の感情が宙ぶらりんになってしまって、気持ちがついていかないのよ。
「シェエラザード」も同じような構成でしたが、浅田さんのお好きな書き方なのかもしれません。

そんな、ちょっと苦手な構成でしたが、物語そのものには、
大きく心を動かされました。

この作品に描かれている親子の絆、友の絆、同士の絆。そして武士の義。
どれもが贅肉をそぎ落とした真摯なものに思いました。
今の世の中では忘れ去られているような、
文字通りの命懸けの絆であり、義であった。
そこを描き切っていると思います。

作品を読み終わって、感動とは別に、何か困惑する感覚も持ちました。
彼の生き様も息子の生き様も、周りの人間たちの生き様も、
すべてあの時代であったからこその生であったのだと思うのです。
それを、今、命のやりとりをしなくても済むこの時代に生きている私の中に、どう納めればいいのか、ちょっと混乱する感じ。
ああ、こういう人がいたんだな~、すごいな~で終わるような作品ではないだけに、
何か大きいものをもらったような感じがするだけに、
さて自分を省みて、時代背景の違いを持て余している感じです。


吉村の妻子への思いや、長男、嘉一郎の吉村への思い、長女みつの吉村への思いが、切々と私の深いところを揺さぶります。
彼らの濃くて甘やかな親子の情に、どうしてこの親子はお互いがお互いを思いやる優しい絆を持てたのだろうと思います。
親もギリギリの選択を強いられて、そういう強い逆風の中に親子が生きてきたがため、
あるいは、「武士の世界は本音と建て前の世界」だからこそ、そこで生きる人間として、相手の心に敏感な感受性が備わっていたがため、
そういう時代背景も、感じたりはするのですが。
だけどやはり、吉村の思いが素朴で真っすぐで、そして強かったからこそ、なのだと思います。

全編通じて吉村は、ただの一度もぶれません。
それだけ強く人を愛することのできた吉村に、会えてよかったと心から思います。
この先、私の中の根っこのようなところで、吉村は深く存在し続けるような気がします。
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  ◆◆

「壬生義士伝」読了おめでとうございます。
ここしばらくフルマラソンモードでコメントが遅くなってしまいました。

>独白部分と、大正時代になってからの聞き語りの部分

 私も最初はちょっと面食らいましたが、途中からは慣れたのか
 変化を楽しむ気持ちも出てきました。

>全編通じて吉村は、ただの一度もぶれません。

 これはほんとうに凄かったです。

この小説を読む前と後では、家族・親子・友についての考え方が変わったような気がします。と言うか、より深く考えるようになった気がします。いつも考えている訳ではありませんが(^_^;

私は読後かなり寝かせてあるのですが、そらさんの素晴らしい感想を読んだら書きにくいなあ(^_^)


by: ひろ009 * 2005/11/26 12:40 * URL [ *編集] * page top↑
  ◆◆

ひろさん、こんにちはっ♪
マラソン、なかなかいい感じみたいで、よかったですね♪

「壬生義士伝」、語りの部分の変化を楽しんでいたのかぁ。なかなかやるな~。
きっとそれを作者も望んでいたと思うよv-218

>家族・親子・友についての考え方が変わったような気がします。と言うか、より深く考えるようになった

うんうん。結構影響力がありますよね。読んでよかったと心から思いました。ま、私も四六時中考えているわけではないけれど(^_-)-☆

ひろさん、ご紹介ありがとね。
また、いろいろとご紹介ください♪

>素晴らしい感想
何をおっしゃるうさぎさんv-8
ひろさんの感想、ゆっくり待ってます♪
by: そら * 2005/11/27 14:24 * URL [ *編集] * page top↑
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読書感想「壬生義士伝」
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