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東京物語
2005 / 12 / 12 ( Mon ) 08:49:56
久雄の18歳から29歳までの東京での奮闘記。
元気をもらえる連作短編集でした。

★★★★☆

【あの日、聴いた歌 1980/12/9】久雄21歳。
久雄は大学を中退して、小さな広告代理店に入ります。会社の一番下っ端として、朝から晩までお昼ご飯も食べられずにあちらこちらをかけずり回っています。
その中で、ジョン・レノンが殺された日を描いた作品。
久雄は目が回りそうな忙しさの中、ジョン・レノンの死を知ります。
だけど久雄はそんなものにかまけている暇もないほど忙しい。
何だかね、昔とっても好きだった人のニュースを聞いても、すぐに反応できない久雄の、この気ぜわしさがよく分かるな~。
自分自身も、以前とは違う自分に、小さな満足があったりして。
1人のミュージシャンの死に揺れてしまう自分が気恥ずかしいような、そんな突っ張った自分がいるんですよね。

【春本番1978/4/4】久雄18歳。
大学に落ちて、東京の予備校に通うことになった久雄。
東京に出てきたその日の長い1日。
久雄の目には驚くことばかり。
標準語を話しているつもりなのに、「どこから来たの」と言われて、軽くショックを受けてみたり、地下鉄の路線図に頭がくらくらしてみたり。いつまでも田舎の風景にならない車窓に不安になったり。

大学に入ったとき、クラスメートの男の子が、しきりに自分の故郷の自慢話をしていたことを思い出しました。
彼もきっとこんな思いをしていたんだな。
私はずっと東京に住んでいたから、それが当たり前のように思っていたけれど、
ビルも地下鉄も、そうだよね~、びっくりだよね~。
そういえば彼も地下鉄は恐いと言っていたっけ。
久雄はとっても行動的。寂しさを抱えて1人で部屋に…なんてことはしない。

そのあふれんばかりのエネルギーが、すごく眩しかったです。

【レモン1979/6/2】田村久雄19歳。
大学生になり、久雄は演劇部に入ります。
サークル内の女の子、小山江里にさんざん振り回される1日。
江里、いいですね。
突拍子もなくて、豪快。だけどやっぱり女の子という感じがすごくいい。
こういう子は男の子にも女の子にも人気があるのよね。かわいいな。
久雄も女の子の機微に触れて、少し大人になったみたい。
このお話は、久雄も江里もとてもかわいくて、題名どおりレモンのみずみずしさが漂っていました。

【名古屋オリンピック1981/9/30】久雄22歳。
広告代理店でコピーライターとして充実した生活を送っている久雄。
大学を辞めて一足早く社会人になった久雄は、同じ22歳より少し自分が上ではないかと自信を持っています。
部下も2人できて、彼らの仕事のできなさ加減を見下したりもしています。
そんな、ちょっと天狗になっている久雄を、ガツーンと目覚めさせた1日。
久雄のすぐに突っ走って有頂天になってしまうところも、そして素直に自分を省みるところも、この人の魅力です。
単純といえば単純。真っすぐといえば真っすぐ。
彼の周囲にはそんな彼を育ててくれる大人がそばにいるんですね。
久雄、頑張れよ、と応援したくなります。

【彼女のハイヒール1985/1/15】久雄25歳。
2年前に会社を辞め、フリーランスのコピーライターになっている久雄。
まだ結婚なんて考えられない年なのに、名古屋の母は心配している。
母の陰謀でお見合いをさせられた久雄。
同郷の洋子さんを紹介されたが、彼女もまた嫌々お見合いに来ていたので不機嫌きわまりない。
そのお見合いの1日。
洋子のジェットコースターのような喜怒哀楽につき合わされた久雄。
彼女の機嫌につられて、久雄の気分もころころ変わります。
25歳。ちょっと前は結婚適齢期なんて言われていましたね。
だけどまだまだ洋子さんは夢を追いかけているんですね。
溌剌とした洋子さん、私も久雄と同じように、いいんじゃないのと思いました。洋子さんと結婚したら毎日大変そうだけど。
洋子さんと久雄、少し期待してしまいました(笑)

【バチェラー・パーティー 1989/11/10】久雄29歳。
あと数日で30歳になる久雄は、バブル景気の浮かれた世の中で、そこそこの成功を収めています。
とっくに結婚して、子供も1人、2人いるような、何となく思い描いていた自分の未来とは違う人生を歩んでいる久雄がいます。

「久雄はだれかに認められたかった。人の心を動かしたかった。会ったこともない、多くの人の心を。」「たぶん自分は、二十九歳にもなって、将来は何になろうなどと考えているのだ。」

久雄はまだまだ自分の可能性を信じています。

そんな久雄が、「青春は終わり、人生は始まる」気分になった1日を描いています。

ベルリンの壁が崩壊した日、久雄は「手近ですませた」恋人の理恵子の感傷に少しつき合い、大成功を収めている不動産屋(郷田)のいいようのない不安や孤独につき合い、結婚前夜になってあがいている友達(小倉)につき合います。

「長い一日だったな。吐息が漏れる。郷田に振りまわされて、小倉の胸のうちを聞いて、理恵子の可愛いこだわりの相手をしてー。でも悪くない一日だった。人の気持ちを聞くと、なんだかこちらまで癒された気がする。人と触れ合うと、勇気が湧いてくる。」

これこそが久雄の持つプラスエネルギーなんだろうと思います。
こういうふうに思える久雄がとても好き。
私も、久雄に会えて元気が出ました。
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  ◆◆

おはようございます♪

この本、奥田さんらしい一作だと思いました。
(これは彼の私小説ですか??)

私、実は伊良部先生シリーズ以外の奥田さんが苦手なのです。
自らのヘンなプライドに振り回されている主人公が鬱陶しくて。それはどこか自分に似ていて、同族嫌悪なのでしょうけれど・・・

伊坂さんや村上春樹さん(←ただしエッセイ限定)が好きなのは、そういうヘンなプライドを感じられないからなのかな、と思います。
読んでいて、本作の『春本番』と、伊坂さんの『アヒルと鴨のコインロッカー』をついつい比較してしまいました。
まぁ伊坂さんの場合は東京→地方の大学へ行ったケースですけれど、椎名のように、緊張はしていてもヘンな気構えがないほうがいいよ~と思いました。

時に天狗になりながら、その思い上がった鼻をへし折られてすぐに反省する久雄がイイですね。もっともっと嫌なヤツだと逆恨みしてきますからね。
久雄は平凡な素直さがあって、少しウザいけれど、憎めないと思いました。

その後バブルがはじけて、一体みんなどうなったのかな~と最後に思いました。
by: nao * 2006/07/27 09:07 * URL [ *編集] * page top↑
  ◆◆

naoさん、こんにちはっ♪
そうか~、naoさんは、奥田さん、苦手なのね(*^_^*)
>自らのヘンなプライドに振り回されている主人公
ふむふむ。私は、その自信がまぶしくて好きなんだけど、
ホント、人それぞれだねっ♪

これ、私小説なのかしらね。私も作者の経歴に似てるな~と思ってました。

>久雄は平凡な素直さがあって、少しウザいけれど、憎めないと思いました。
うんうん、憎めないね~(*^_^*)
素直なところが久雄のよさだよね~。

バブルが弾けて…どーなっちゃったんだろうね。
久雄はきっと、作家になって、直木賞かなにか獲ってるよv-218
by: そら * 2006/07/28 11:35 * URL [ *編集] * page top↑
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