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「学習障害児の相談室」上野一彦編
2006 / 02 / 14 ( Tue ) 17:10:10
1987年出版。
上野一彦…東京学芸大学教授。「発達心理学」「臨床心理学」専門。なずなの会というところのHPに講演内容が掲載されています。結構分かりやすいかも。講演内容はちら

この方、実際に「学習障害」を抱えた子どもや親の面談を多く手がけてきただけあって、親の気持ちを汲むような語りかけをしています。
実際どうすればいいのか、という具体性には欠けるけど、
指針としては役立つのではないでしょうか。
出版されたのが20年前ですから、例えばここに紹介されている水道式の算数教科書は絶版ですし、ほしい情報が古いのが玉にきずです。

それにしても。。。。
障害という言葉。考えさせられます。
社会が「障害(=じゃまなもの)」としてラベリングしていた歴史があまりに長すぎたかな。
障害何たらの専門家や、少しでも意識のある人たちは、「障害」という言葉は、彼あるいは彼女が社会の一員として参加するのに「障害(=他の手段が必要であったり、あるいはその手段を使うのにコツが要るもの…って感じかな。上野さんは不利をこうむるものという表現をされています)」となるもの、という意味で使っているのですが、
そういう一部の良識ある(のかな…)人たちのイメージがなかなか浸透しないですね。
悲しいことに。
だから、「学習障害」という言葉で当事者も親もひどく傷つく。異質なものと見られることに大きな心理的負担を強いられる。。。。
あるいは、子ども社会において、「障害児」という言葉がいじめの言葉となりうる。。。。

また、脳についても考えさせられます。
何か問題を抱えている、という子どもたちを判断する材料として、
「脳にちょっとしたトラブルがあるのではないか」と考えることは、
実はとても楽なことなように思います。
今現在、脳の細かい動きをすべて解明できているとは言い難い中で、
「よく分からないけど脳の一部が少し動きが悪いようですよ」と言うことは、何だか「専門家」らしいし、納得しやすい。
だけど、「完全な脳」なんてあるのかな~。
人間がそれぞれ個々に違うように、脳も個々に違うんじゃないかな~。
その「違うところ」をもってして、それが問題なんです、なんていう言い方をされても、現実問題として何の助けにもならないんじゃないのかな~。
何だかそんなことを思いました。
本の中のピックアップ。
【はしがき】
「「学習障害」という診断名をつけることは、不適切な診断名のもとで、まとはずれな原因の科を負わされてきた親の心理的負担を軽くし、子どもをとりまくさまざまな環境条件を整え、その子どもと親に、具体的で希望に満ちた将来の展望を開くことにつながらなければ意味がありません。」
【4学習障害の原因と予後】
「たしかにわが子に障害と名がつけられて、すんなりと受け容れられる人は多くないでしょう。…でも別の考え方もできます。今現在何かをしようとするときにそこから”障て(へだて)”妨”害”するもの。」
「学習障害とは、現在その人間が生活している場の中で要求されている学習が現時点でうまくいかない状態ーそういった現象をあらわしていることばと考えたらどうでしょう。」
【11.認知の障害について】
「私たちは目や耳といった…感覚器官は正常に働いているのに、見たり、聞いたりした内容を頭のなかで形や音としてうまく捉えられないといったことがあります。ふだん、あわてて探し物などしていて、目の前に見えているはずのものがわからないといったことがあります。こうしたことが比較的、始終起こっているとしたらどうでしょう。」
「これらは目や耳といった末梢器官ではなく、認知と呼ぶ脳の働きの問題なのです。…年齢的に見て大きく遅れたり、部分的にうまく発達してこなければ、認知の障害ということになります。こうした認知の障害は、目や耳だけでなく、触覚や自分の身体の動きやバランスを感じとる運動覚にも起こります。」
「認知面のかたよりは、だれにでもあります。図で説明するとよくわかる、話を聞くのが好き、地図が苦手など、私たち自身にも…認知スタイルがあるのです。ですから、そのひとのスタイルにあった教育方法をとればより効果的だといわれています。」
【22.子ども自身に学習障害をどう理解させるか】
「学習障害は、脳の働きが部分的にうまくいっていないために、みんなと同じようにできないことがあるけれど、目が見えないとか脳全体のはたらきがよくない場合と違って、人よりもたくさん時間をかけ、少しずつ努力すれば、だんだん進歩していくのだということを子どもにもわかってほしいと思います。」
「そのために、今どこまでできるのかを明確にさせ、次の目標は何かということを自覚させます。そして、子どもの努力や少しの進歩でもちゃんと認めてあげることです。」
【49.繰り上がりや繰り下がりのある計算ができない】
【大事だけど嫌いな算数】
「学習障害児の場合、計算力が弱い子どもが多くいます。これは、量的な把握や概念化とか論理操作といった抽象的な思考力そのものの弱さに関係しているといえるでしょう。」
【数概念の基礎】
「10までの数について、…8個のものを数えることができても、子どもが8という数字を知ったわけではなく、他の数との関係を知ることで、初めて8という数概念ができたといえるでしょう。3と5で8になるとか…」
【繰り上がり・繰り下がり】
「今まで指を使うことで何とか解決していた問題も、これからはできません。その結果、子どもは問題を避けたり、混乱したりします。なるべく具体物を使いながら、子どもが集中できる状態を作ることが大切です。」
【53.小数・分数でつまずく】
「量的把握や概念化、論理操作などの抽象思考が苦手な子どもは、小数や分数の計算の仕方を理解するのはもちろんのこと、その基盤となるそれぞれの意味を理解するのに、かなり苦労することでしょう。
【小数】
「小数第一位×小数第一位…かけられる数、かける数の右側にはそれぞれ1つずつの数字があるので、答えの小数点の位置を右側から2つ目にずらしなさいという指導も必要と思います。ただし、単に機械的な操作だけに終わらないように気をつけてほしいと思います。」
【分数】
「分数指導でも具体的な場面、具体物を使いながら行うのがいいでしょう。」
【58.勉強面では落ちこぼれながら六年生まできたが】
「学力的にすっかり「落ちこぼれ」「落ちこぼし」きってしまった子どもの場合、現在の中等教育システムのなかで、その学力の個別差に有効に対処することはほとんど期待できないというのが本音です。私たちが願うのは、せめて小学校四年程度の基礎学力と年齢相応の社会適応力をなんとか身につけ、中学卒業後の進路にそなえてほしいということです。」
【70.学習障害児の親の会について】
「学習障害児の場合、障害という名をつけるにはあまりにも軽く、…」

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  ◆◆

そうですね。子供本人にどう説明し理解させるのかが一番大切なことかもしれないなあ。みんなより時間がかかるのはしょうがない。でもやれば出来ることもあるんだと思うかその前の段階で諦めてしまうかは一生を左右しますね。
by: saheizi-inokori * 2006/02/17 09:06 * URL [ *編集] * page top↑
  ◆◆

LDという概念は、浸透してきたような気がしていたけれど、
まだまだなんだよね。
実は学校現場にいる少なからぬ人たちが、LDをぜんぜんわかってないのが(以下略)。
そゆわたしもおぼろげ。

もうひとつお題。
「障がい者」と書くの、どう思いますか。

by: たまねぎ * 2006/02/17 17:40 * URL [ *編集] * page top↑
  ◆◆

>子供本人にどう説明し理解させるのかが一番大切なことかもしれないなあ。
うんうん、そうだよね。子どもがどういう認識の仕方をしているのか、そういう認識の仕方をしている子どもに「理解させる」にはどういう工夫が有効か、っていうことの手助けとなるかと思って読んでみたんだけどね。
まぁ、「認知」世界は奥が深いです(^^;)
>やれば出来ることもあるんだと思うかその前の段階で諦めてしまうか
私も、この2つには、全然違う人生が待っているように思います。
そして、そう思う大人があまりにも少ないという事実に接し、
結構驚きを感じてもいます。
小さな小さな「やればできる」かもしれないけれど、そんな小さな達成感でも、経験したのとしないのでは、きっと違う…よね。(と思いたいな)
by: そら * 2006/02/17 23:39 * URL [ *編集] * page top↑
  ◆◆

たまねぎちゃん、こんばんはっ♪
ごめん!いろいろお話ししたいことがあったんだけど、
こう思うんだけどなって聞いてもらいたいこともあったんだけど、
そんなことを書く前に、バタバタしてしまいました。
そして、ついでに酔っぱらってしまいました('◇')ゞ
ゆっくりお話ししたいので、ちょっと待っててね♪

by: そら * 2006/02/18 01:03 * URL [ *編集] * page top↑
  ◆◆

こんにちは。
私は大学で福祉を専攻しているので、障害についても勉強してます。
福祉の制度は改正され、充実してきているとは言いますが、やはり個々人の人々の考えが変わらなければ、変わっていかないんじゃないかなぁって思いますね。
最近、障害者を「障がい者」と表現しています。
それは、自分にとっても人にとっても、害はないし、差別用語だと考えられているからなんですよね。
でも、それを知っている人は少ないだろうし、やっぱりみんなが知っていかなければならない問題だと思います。
LDも問題視されていますよね。
結構多い確率でいるそうで、一クラスに1人はいる計算になるって、言われました。
その対策も最近考えられてきてはいるそうですけど、遅いですよね。
お子さんみんなが過ごしやすい生活って、難しいんでしょうかね。
by: 苗坊 * 2006/02/18 10:11 * URL [ *編集] * page top↑
  ◆◆

苗坊さん、コメント、ありがと~♪
>個々人の人々の考えが変わらなければ、変わっていかないんじゃないかなぁって思いますね
そうだね~。これがなかなか難しい。。。。
考えを変えることも難しいし、
たとえ変わるとしても、時間がかかるだろうな~と。
変わるまでの間に、ラベリングによって健やかな成長を損なわれてしまう子もいるんだよな~と思います。
LD(larning disability)はdisorderではあるけれどhandicapではないと欧米ではされている、という記述が「ディスレクシアなんか恐くない」という本の中でありましたが、
学習障害という言葉のどこにそれを求めればいいのかなぁ。。。
>お子さんみんなが過ごしやすい生活
ネーミングにしろ、当事者への直接的な援助にしろ、親へのアドバイスにしろ、そういう視点からブレないことが大事なのかな~なんて思います。

苗坊さんは、専門家の卵さんなのね。
何だか、ちょっと将来に希望が持ててしまった(*^_^*)
by: そら * 2006/02/19 16:58 * URL [ *編集] * page top↑
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