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「カノン」篠田節子
2005 / 05 / 20 ( Fri ) 21:36:10
直前に読んだ「弥勒」がおもしろかったので、
同じ作者の作品を読んでみました。
全然違う傾向の本でした。

★★★☆☆
主人公瑞穂は39歳音楽教諭。仕事に理解を示す夫と、気管支喘息の息子の3人で安定した生活を送っている。
そんな中、瑞穂の学生時代の恋人(?)、康臣が瑞穂にテープを遺して自殺した。テープの中身はバッハのカノン。
テープは瑞穂に学生時代の気持ちを思い出させ、瑞穂の周りに不可思議な現象をもたらした。
そこで瑞穂は…というお話。

ホラーということになっているけど、
ホラー色はほとんどなく、怖くもありません。
どちらかといえば瑞穂の心の軌跡を丁寧に描いた作品です。

人生80年だとすれば、40歳はちょうど人生の半分です。
で、40歳前後の人なら、今までの自分の人生について、一度は考えたことがあるはず。
こんなはずではなかった、とか、
私の今まで積み上げてきたものは何だったのかなとか。

そしてこれからの40年について、考えたことがあるはず。
このままでいいのかな、とか、
私にとって大事なことは何かな、とか。

そういう40代の、いわゆる「中年クライシス」を具現化した作品だと思います。

私自身は瑞穂に共感できなかったけれど、
こういう人もいるかもねと思いながら読み終わりました。

ただね、瑞穂、素人なのに勝手に山に入っちゃだめだってば。
あんたが遭難したらいろんな人が迷惑するんだからね。
40歳なんだから、もう少し分別というものを持ってみようよと思ったのでした。

この作品の中で、康臣のバイオリンは、「すすり泣く高音も包み込む低音もなかった」と記述される部分があります。
だから人の心を打たないという評価をする人がいる一方で、
瑞穂は「「すすり泣く高音も包み込む低音」も、一時的な気分に過ぎない。すぐれた音楽のはらむ感情は個人的感傷を超えて、普遍的で雄大だ」と
彼の音楽に共鳴します。

この対極にいるのが、最近新聞で連載されていた「賛歌」の主人公なのかと思いを馳せました。
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