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「照柿」(文庫版) 高村薫 
2006 / 09 / 19 ( Tue ) 16:09:48
この作品、文庫版をお薦めします。
ハードカバーと文庫の間に、あらすじや人物造型に大きな違いはありません。
けれども、とっても不遜な言い方ですが、「高村薫の12年間の成長」が感じられる作品です。
全体的に、くっきりと輪郭が浮かび上がる表現に書き換えられています。

★★★★★

意識化にも上らない、あぶくのように湧き上がるさまざまを
丁寧にすくい取り、
野田達夫の壊れゆく精神と、
合田雄一郎の恋狂い(?)を描きます。

ハードカバーでは、それが行き過ぎて、
何ということのない行動の描写や情景の描写も、また詳しく描かれていたのですが、
文庫版では、ばっさり切るところは切り、代わりに、よりインパクトのある描写が挟み込まれています。

ラストも、ハードカバーのときに感じた唐突さはなく、
あ~、そうだよ、合田の台詞はこれなんだよと思います。
本当に、もう言うことなし。
私は深い深い感動と充足感を得たのでした。

エピソードは細かい変化も、吟味されているな~と思います。

例えば合田と美保子の映画のシーン。
解説で、ここは15パーセントほど減っていると書かれていましたが、
そう言われるまで、このシーンのページ数が減っていると気づきませんでした。
むしろ、豊かに膨らんでいるような、そんな印象を持っていました。
合田と美保子の会話が切ないです。
このシーン、とても好き。

例えば加納祐介が合田のアパートに行き、置き手紙を残していたシーン。
そこから合田は、加納との関係を考え、元妻と破綻の原因をつらつら考えているのですが、
まぁ、しつこいこと、しつこいこと。
「…だった。いや、…か。いや、…だったのだ。いや、…」といった調子で、「いや」が7回も8回も出てきます。
1つの出来事に対して、何が原因か、いろんなことが考えられて、考えているうちに違うことを想起して、どんどん脱線していくことってよくあるよな~。
そのすべてを描こうとする高村さんについていくのは結構体力も要るのですが、合田の「生の気持ち」に触れているような、「今」に触れているような、そんなドキドキがここにはあるのです。
固い目玉焼きや靴洗いのエピソード、自分は池のようなものだという内省、貴代子への謝罪の言葉、この1シーンだけで、これだけのものが削られています。
どれもこれも、削られてみて初めて、なるほどね~と思います。
このシーンは、貴代子への思いがあふれるシーンではなく、貴代子を思い出すことによって今の立ち位置を確かめている、そんなシーンなんだよなぁと。

あれも、これも、どのシーンも何かしらの変化があり、そこには作者の熟考があり、配慮があり、伝えたいという意思があり、ただただ、そうかぁと感嘆しました。

『照柿』、君は幸せな作品だねぇと思ったのでした。
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*Comment  Thank you*
comment
  ◆私もっ!!◆

今度こそ「照柿」読むぞって!決心しましたv-42
少し読み始めて中断してしまったのです。
なぜって、読み終わるのが怖いこと(惜しいかな?)。
切なくなって、しばらく引きずってしまい、日常に戻れなくなってしまうこと。
でも、酷暑のうちに読まなければ!と思っていたのです。
そらさんに先を越されてしまいましたね。私もやってやる~v-217
ではv-222
by: くん * 2006/09/20 10:20 * URL [ *編集] * page top↑
  ◆そのうちに・・・◆

それこそハードカバーの方は10年以上も前に読んだので、内容も全然覚えていないのですが、2時間ドラマになっていませんでしたっけ?夕方のオレンジ色に染まった部屋でのラブシーン(だったかしら)がいかにも照柿のイメージだったような・・・。

このごろは高村作品読んでませんが、一時ははまってました。文庫版、がんばって読んでみようかな。ハードカバーはどこにしまったのか、探すのに時間がかかりそうなので(笑)、そらさんみたいに比較はできないけれど。

お祝いの言葉もありがとうございました^^。
by: こっこ * 2006/09/20 10:30 * URL [ *編集] * page top↑
  ◆◆

くんさん、こんばんはっ♪
うんうん、ぜひとも夏の暑さの名残があるうちに♪
最後まで読んだ方がいいよ~。(とあおってみるv-8

くんさんが読み終わったら、またお話ししましょっv-218
by: そら * 2006/09/20 22:43 * URL [ *編集] * page top↑
  ◆◆

こっこさん、こんばんはっ♪
へぇ~、ドラマになってたんだ。
知らなかった。。。
見てみたいような、見たくないような…だなぁ(*^_^*)

ハードカバーとの比較、これ、はっきり言って邪道ですo(^▽^)o
やっぱりね、純粋にそれだけ読んだ方がいいと思うよ♪
ま、どこに行ったか分からないハードカバーは諦めて('◇')ゞ
>文庫版、がんばって読んでみようかな。
機会があれば、ぜひともv-218
by: そら * 2006/09/20 22:52 * URL [ *編集] * page top↑
  ◆読んだ!◆

ここにコメントさせていただいていいのでしょうか?(今日は26日ですけど・・・)
「照柿」・・ハードカバー版を最近再読したので、話の筋はわかっていて、次はあのシーンだねとか、ほ~こうきたか!とかつっこみを入れながら読みました。
まず、変わらないのは、あの負のひねくれた、しかし切な過ぎる合田雄一郎の存在!!・・あなたは結婚には向かないね・・・v-12
そしてスーパーリアリズム!!最初ハードカバー版を読んだときは、熱処理工場内の情景を頭の中で再現するのが大変でしたが、今回はなんとか飛ばさずに頑張りましたv-91これは高村作品の特徴ですよね。他の作品で、銃とか、爆弾、経済、政治、鰊漁、僧侶なんか詳しくなりましたもの。
全体として、確かにそぎ落とされた部分も多く、皆さん言われていましたが、高村氏の12年の成長が見られたと私も思います。
最後の「好きや・・」の台詞が書き換えられている点は、多分人それぞれではないでしょうか?
「才能がある・・・あんたになりたい・・・」より私は「好き」と言われたい!!!v-238
では。
by: くん * 2006/09/26 22:28 * URL [ *編集] * page top↑
  ◆◆

くんさん、こんばんはっ♪
>ここにコメントさせていただいていいのでしょうか?
いいのよ、いいのよv-221
どんなに古い記事でも、コメントつけてくださいな♪

ラスト、ハードカバーのほうがお好きなのね。
私は、えぇ~っ!君の好きな人はだれやねん!!みたいな唐突な感じがしたので、今回の文庫版のほうがスムーズに読めました。
ま、衝撃的なのは、断然ハードカバーだけどねv-8
>多分人それぞれではないでしょうか?
そりゃそうだo(^▽^)o
by: そら * 2006/09/27 21:51 * URL [ *編集] * page top↑
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