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「ミーナの行進」小川洋子
2006 / 09 / 24 ( Sun ) 14:26:01
『博士を愛した数式』が、ほろほろと壊れてしまいそうな砂糖菓子のようだとしたら、
この作品は、作品中に登場した甘くて透明な清涼飲料水、「フレッシー」のような作品でした。

★★★☆☆

父親を亡くし、母の事情により、1年間伯母のところに預けられることになった朋子。
芦屋のスパニッシュな洋館、洗練された調度品、シャンデリアに暖炉。
中学1年生の乙女心をばっちり満たすそのお屋敷の中では、
ダンディーで周りを明るく和ませる伯父さん、無口で、自分で話すより人の話を聞くことを好む伯母さん、ドイツ人のローザおばあさん、家事全般を取り仕切っている米田さん、無口で実直な庭師の小林さん、それと喘息持ちで夢見がちな、美しい従妹のミーナが住んでいました。(小林さんは通いだったけど)
あと、忘れてはいけない、庭にはペットのポチ子もいます。

朋子は、穏やかでゆったりとした芦屋の洋館の人々と、特にミーナと、温かい日々を過ごしたのでした。

…というお話。

現実には、伯父さんはときどき家に帰ってこなくなり、伯母さんは煙草の煙の中で誤植を探す作業に没頭しており、米田さんは天涯孤独を思わせ、ローザおばあさんにはつらい過去があり、そしてミーナは病弱で、ミーナのお兄ちゃん、龍一さんはお父さんと少しぎくしゃくしているようでもあり…と、
絵にかいたような理想の家族ではなかったのだけれども、
それでも朋子は、ここの生活を心から愛し、ここに集う人々を大事に思い、なじんでいきます。
そして30年たっても、その思い出は色褪せることなく、朋子の中で生き続けています。

写真を見るたびに私はつぶやく。全員揃ってる。大丈夫。誰も欠けてない。



ここには善意があふれ、慈愛に満ち、穏やかでゆったりとした時間が流れています。
不信や憎悪や嫉妬や焦燥など、およそ負の感情が見当たらず、
まるでおとぎ話のようなお話でした。
朋子は1960年生まれ、この作品の時代背景が1972年。
私は朋子よりほんの少し後に生まれているのですが、
ここに描かれているミュンヘンオリンピックも、そこで起きた事件も、ジャコビニ彗星も、何も覚えていないな~。
なので、その時代の空気が懐かしいという感慨も持てず、
余計に「おとぎ話」のように感じられました。

ミーナがマッチ箱の裏に書いた、マッチ箱の絵にふさわしい童話。
これ、そのまま絵本にしてもいいぐらい。
とても繊細で美しく、私は大好き。

挿絵も1枚の絵のように美しく、存在感があって好き。

朋子の一人称で語られる文章も、そっと大事なものをすくい上げてみせるような感性豊かな文章で、この作品にマッチしていたと思います。
伯母さんの趣味である誤植探しの場面は、朋子の手にかかると、砂漠の中から1粒の宝石を探す旅になります。
水曜日の青年は、フレッシーの運搬人だけに留まらず、魔法の絨毯に載る旅人になります。
従兄の龍一さんは、情熱的で大地のように力強い青年に生まれ変わります。
夢見る乙女の文章が、みずみずしい作品です。

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う~ん。。。。。
「とても好き」になってもよさそうな気がするんだけど。。。。
美しい中にもはかなさが漂っていて、「とてもいい」作品だと思うんだけど。。。。

私、この作品を読んでいる最中は不安でした。
現実という名が傍若無人に踏み込んでくるのではないかと不安でした。

朋子は、米田さんのことをスノードームの中の雪のような人だったと言っています。ドームの中ではきれいに舞い落ちる雪も、ドームの外に出たとたん、得体の知れないただのどろどろになって、もう元には戻れないと。
この作品自体、スノードームのような物語だったと思います。
その美しさは、外界から閉ざされた空間に存在している。
現実への扉が少しでも開いたら、そこから邪気が入り込み、
あえなく瓦解してしまうような危うさを兼ね備えた美しさ。

もしかしたら、もったいない読み方をしてしまったかなと思います。
ラストまで、スノードームはスノードームのまま存在していたこの作品。
再読すれば、安心してその美しさを眺め、心ゆくまで堪能できるかもしれないと思います。
また、いつの日か再読したい作品です。
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*Comment  Thank you*
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  ◆◆

はじめまして。トラバさせていただきました。
きめ細かな文章、美しいカラー挿絵、
余韻でこころが温かくなるような
素敵な物語でしたね。

コメントやトラバ返しなどいただけたらうれしいです。
お気軽にどうぞ。
by: 藍色 * 2006/09/25 15:53 * URL [ *編集] * page top↑
  ◆◆

藍色さん、はじめまして♪
コメント&TBありがとでした\(^o^)/
藍色さんのところ、遊びに行きましたよ。
同じような本も読んでいらっしゃるようで、
とっても親近感♪
近々、もっとゆっくりお邪魔しに行こうと思っています。

これからもよろしくです(*^_^*)

あ、でもって『ミーナの行進』(^^;)
>きめ細かな文章、美しいカラー挿絵、
うんうん、まさしくそこが魅力!
再度読むときは、変な邪推しないで、純粋に楽しみたいと思っています(^^;)
by: そら * 2006/09/25 21:35 * URL [ *編集] * page top↑
  ◆◆

「博士の愛した数式」以来ひさしぶりの小川さんの本だったのですが、負けず劣らず楽しめました。
そこはかとなく漂う寂しさとそれを見つめる暖かな眼差し。装丁と挿絵もすてきで、出来れば手元に置きたい一冊ですね。
by: あおちゃん * 2006/12/11 12:17 * URL [ *編集] * page top↑
  ◆◆

あおちゃん、こんにちはっ♪
>出来れば手元に置きたい一冊ですね。
私も、もっと思いっきり浸りたかった本なので、
できれば手元に置きたいです(*^_^*)
挿絵、いいよね~♪
by: そら * 2006/12/11 14:04 * URL [ *編集] * page top↑
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ミーナの行進、小川洋子
装幀・装画は寺田順三。岡山在住で主人公で語り手の朋子は、1966年に父親を亡くした後、母親が東京の専門学校で1年間洋裁の勉強することにしたため、1972年、中学1年生の4月から翌年3月まで、芦屋に住む伯母夫婦のもと 粋な提案【2006/09/25 15:39】
「ミーナの行進」小川洋子
タイトル:ミーナの行進著者  :小川洋子出版社 :中央公論新社読書期間:2006/11/27 - 2006/11/29お勧め度:★★★★[ Amazon | bk1 | 楽天ブックス ]美しくて、か弱くて、本を愛したミーナ あなたとの思い出は、損なわれることがない―懐かしい時代に育まれたふたりの AOCHAN-Blog【2006/12/11 11:55】
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