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「流星ワゴン」重松清
2005 / 07 / 21 ( Thu ) 13:50:40
感受性が鈍くて情けないお父さんの物語です。
久々に泣ける本でした。

★★★★☆

引きこもり、家庭内で暴力を振るうようになった息子、広樹、浮気を重ね、離婚を切り出す妻、美代子、そしてリストラに遭い、家庭の崩壊から目をそらすしか能のない主人公一雄。

一雄がもう死んでもいいと無気力になったとき、父子連れのワゴン車が一雄の前に止まる。
この父子は5年前に交通事故で亡くなっていた。。。

橋本さん父子は一雄(カズ)を乗せ、カズの大事な場所へ時間を超えて運んでいく。

不器用で、だけど何よりも息子健太を大事に思う橋本さんの心のうちを思うと、やり切れない思いがあります。何であのニュースで笑えるのか、私には分からない。

カズを自分のやり方でしか愛せなかったチュウさんが、切なかったです。
癌の告知をしなかった子供に対して、「子供は親に言うともええし、言わんでもええんよ、子供の楽なほうにすれば、親はのう、それがいちばんなんよ。」という言葉が、胸に響きます。
カズの息子、広樹は中学受験に失敗して、公立中学に行き、そして学校に行けなくなります。

あまりにも身近にそういう不安の毎日を過ごしていた私には、この設定が切なくて。。。

中学受験は親の受験だそうです。
だからお母さん、勉強は塾で見ますから、お母さんはお子さんの精神状態をよく見ていてください。ストレスがたまっているときは、遠慮なく塾に相談してください。そして必ず1つは入れる学校を受けてください。これは塾でよく言われる言葉です。

受験生は小学生なのだから、まだまだ子供なのだから、
現実認識ができなくて当たり前です。
自分がこんなに頑張っているんだからきっと希望の学校に入れると、自分の将来を夢見ることは当たり前なんです。
お友達とも遊べない、毎日毎日勉強ばっかり、学校に行っても浮いた存在になっている、それでも成績は上がらない。
こんな毎日を自力で切り抜けろって言われても、それは無理でしょうと思います。
切り抜けられないならやめろと言われてもねぇ。。。。
どうすればいいのか教えてくださいというところじゃないでしょうか。

だけどこの両親、そもそも広樹が鬱屈した思いを抱いていることも分かってない。
カズはそういう思いに初めて気づいて、驚いて、そして言った言葉が、受験はやめろ。。。
違うんじゃないのと思います。

どうもカズは、何に対しても「逃げの姿勢」が習性になっているようです。
広樹の夢に乗っかって、自分は応援していればいいなんて気楽な立場に甘んじて。
その立場が危なくなったら、今度は落ちたら公立に行けばいいとか、嫌になったら途中でやめればいいとか、本当にいい加減。
自分が手をさしのべようという発想はこの人にはないみたい。
みんな広樹に押しつけて。

それでもカズはちょっとばかりいい親になった気でいます。

「親にとってなによりもつらいのは、子供が悲しんでいることではなく、子供が悲しみを自分一人の小さな胸に抱え込んでいることなのだと、僕はやり直しの現実で知った。」
のだから、多分カズはちょっとばかり親らしい親になったんだと思います。

「そのとき」広樹のことをちゃんと見ていなかった自分、あるいは広樹に自分の思いをきちんと伝えていなかった自分と、
「今」広樹の行き先を知っているけど、将来に夢を抱く広樹にどう接したらいいのか迷う自分と、
カズの中でごっちゃになっています。

だから最終的に、
「子供が「信じてよ」と言う未来を信じてやれないのは、子供について何も知らないことよりも、ずっと悲しくて、悔しい」という思いから、「僕は、僕の息子が信じる未来を、信じる。息子が未来を信じていることを、信じる」という思いに変わることで、何か吹っ切れたものがあったのだと思います。

うん、これはこれで何か一歩違う扉を開いた感じがあって、よかったね、広樹と思いました。

私たちは完全な人間ではないのだから、完璧な親にはなれません。
だから子供に対しても、分かってなかったり、いい加減だったり、無責任だったり、勝手だったり、そんなことのほうが多いかも。
今、正しいと思っていることも、本当に正しいことかどうかも分からないし。
分かっていると思っている子供の姿は、子供が親に見せる用に作った姿だったりするし。
信じているという自分の言葉に酔って、子供が発しているメッセージを受け取れなかったりすることもあるし。
親って失敗ばかりです。

他人の親子の掛け違えやすれ違いは結構はっきり見えるのに、
自分たち親子のことになると、どこが問題なのかも分からないことが多いです。

カズが余りに分かっていなくて腹立たしいのも、ちょっと親っぽく子供に寄り添っている自分に満足している姿に胸がズッシリ重くなってしまうのも、
私はカズの「やり直し」できるその設定が、うらやましかったのかもしれません。
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*Comment  Thank you*
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  ◆◆

親って、子供の年齢ぶんしか親じゃないもんね。
まして子育てを母親任せにしたカズは、親年齢ゼロに限りなく近いよね。
そうは言っても、母である私も親年齢17歳では無いのよね。。
そんなわが身も振り返ってしまいました~
、、、って、そんな母親は私だけかも^^;
by: ゆー * 2005/07/21 18:33 * URL [ *編集] * page top↑
  ◆◆

私はとにかく、この男ダメ。
逃げのヤツは男として認められない。
で、この本は私には向きませんでした~
こんなヤツは仕事で使えないよ。
主人公に、役立たずは要らないからさっさと死ね!って思ったよ。
(過激~~)
by: く~ * 2005/07/21 18:54 * URL [ *編集] * page top↑
  ◆◆

そうだね、カズはやっとちょこっと親の自覚ってものが芽生えてきた?って感じだものね。
それをいかにも、おれって結構いい親かも、みたいな風吹かされてもねぇ(^^;)

>そうは言っても、母である私も親年齢17歳では無いのよね。。

え~なんで?
自分が17年分成長してないっていうことかな?
それはゆーさん、自分を低く見積もりすぎだよ。
17歳もまだまだ「ガキんちょ」の子もいれば、しっかり大人の子もいるし、いろいろだからね、
「親年齢」17歳もいろいろでいいんじゃないのかな~。
「親年齢」って考え方もちょっと違和感あるし。。。
と、人には言える(^^;)

私も結構鈍感で子供っぽくってすぐに逃げるこのおっさんとオーバーラップしてしまって、ヤな感じ~でした(>_<)

by: そら * 2005/07/21 21:15 * URL [ *編集] * page top↑
  ◆◆

>逃げのヤツは男として認められない

おっ♪く~さん、カッコいいねぇ(^o^)
みんながみんな、うんうん、分かるよって甘い顔することないと思うよ。

私は結構自分が、「とりあえず嫌なことは明日にしよ」って性格なので、人のこと言えないよ~という気持ちがあるのだけれど(*^_^*)
by: そら * 2005/07/21 21:22 * URL [ *編集] * page top↑
  ◆◆

オレこの本好きなんですよー

そらさんは「親」としての主人公が印象に残ったようですが、
オレは、「子」としてのチュウさんとの話の方が印象的でした。
やっぱり自分の立場的には、まだまだ「子」だからかな(笑)

いろんな立場で読める本!ですかね?


今日、重松さんの「きよしこ」読み終えました。
オモシロイ!て本ではないですが、
重松さん自身の話のようで、興味深かったです。
by: じゅん * 2005/07/21 22:02 * URL [ *編集] * page top↑
  ◆◆

そらさんの感想を読んでう~んと唸り。
そして、くーさんの一言で読むのや~めよって思いました。

きっと、私に向かないような気がするんですが。
どうでしょ~!?
by: でねぶ * 2005/07/22 09:40 * URL [ *編集] * page top↑
  ◆◆

じゅんさん、おはようございます♪

じゅんさんはどういう感想だったんだけ、と思って、今遊びに行きました♪

そうそう、とても心惹かれる感想だったんだわ。

コメント、書いてくださってありがとうございます♪
私の感じた感想が自分とは違うな~という人のコメントって、書いてもらうとすっごくうれしい。

なるほどね~。親としての主人公と子としての主人公かぁ。

私がここに書いたことは確かに私がふつふつと感じたことだけど、
でもスルッと抜けてしまう感情が確かにここに残っている。そんな感じがちょっとあったの。

腹立たしさと、心温まる感情と、2つが同時に存在していて、何とも複雑な読後感だったのよ。

何なんだろうな~と思っていたけど、
主人公が2つの立場を持ってるから、それぞれに違う反応をしていたんだな~と妙に納得しました(^o^)

チュウさんとカズの父子は、
チュウさんが愛おしくて、カズ、分かってやれよなんて思ったりして。
でもチュウさんの望みどおりにはなれないカズのことも、これはこれでつらいものがあるよな~と思ったんだわ。
こういう父と子のすれ違いってあるよな~とか。
カズがチュウさんを思っていたより小さいと思う場面では、きっとだれもが1度は感じることなんだろうなとか。
私が体験することのできない「父と息子」のその関係が甘酸っぱかったです。

うん、何だかすっきり♪

自分の感じたことを過不足なく文章にするって難しいわ。
by: そら * 2005/07/22 10:00 * URL [ *編集] * page top↑
  ◆◆

でねぶさん、おはよっ♪

ということで(笑)、
すっごく複雑な読後感だったの。

多分ね、でねぶさんも「親」としての主人公に多くつき合っちゃうと思うけど、
それと、妻と向き合おうともしない夫としての主人公ともつき合っちゃうと思うけど、
混じり合わない2つの感想を持ってしまうこの本、ぜひとも読んでみてくださいな。
でねぶさんの感想、聞いてみたいよ。

私もね、もう少し自分の気持ちにピッタリな文章がさらっと書ければいいな~なんて思うんだわ。
by: そら * 2005/07/22 10:08 * URL [ *編集] * page top↑
  ◆◆

そーですね!

そらさんが違う視点での感想だったので、
オレもなるほどそーかーと思って読ませてもらったんです。

でも、オレは不思議と「腹立たしさ」はなかったんですよ。
ダメな奴が過去をどうにかしようとするってトコ、
現在進行形でないってトコからなのかもしれないですけど。

重松さんの作品って、
ダメとかちょっと問題ある奴が、どーにかこーにかして、
前を向こうとする話が多い気がします。
オレもダメな奴なだけにそーいうの好きなんです(笑)

自分の思ってること文字にするのって難しいですね。。
by: じゅん * 2005/07/22 12:33 * URL [ *編集] * page top↑
  ◆◆

じゅんさん、どうもー(^o^)

同じものを見ていても、
人それぞれ視点が違うし、
自分の中にもいろんな視点があるんだな~と思いました。

こういうことも思ったし、
こういうことも感じたよって
ちゃんと整理されていれば、
モヤモヤ感がないんだな~とも思いました。

視点の違うコメント、大歓迎だわ♪
ありがとね(*^_^*)

>重松さんの作品って、
ダメとかちょっと問題ある奴が、どーにかこーにかして、
前を向こうとする話が多い気がします。

うん、確かにそうかも。
といっても、「ビタミンF」ぐらいしか読んでないんだけどね。
あ、これも「せっちゃん」でふつふつと怒りがこみ上げたんだったわ(^^;)

>オレもダメな奴なだけにそーいうの好きなんです(笑)

私もそーいうの好きです。多分。。(*^_^*)
「ビタミンF」も、ほかの話は、私も頑張るから一緒に頑張ろうよって気持ちになりました。

ただ、子供を守ろうという気概もなく、グダグダ言ってるヤツは張り倒したくなるんです。(笑)
めちゃくちゃ迷惑な読者だね(*^_^*)
by: そら * 2005/07/22 14:41 * URL [ *編集] * page top↑
  ◆◆

はじめまして。J子といいます。HPを作ってみたばかりで、何も知らずに始めてしまったので、今、いろいろなサイトで勉強させてもらってます。
ところで『流星ワゴン』です。私は大好きです。私は親として、子としての視点というよりも、「親子関係」としてこの本を読みました。心の繋がりを深く考えさせられました。主人はものすごくそれを感じたようで、この本を読んでから、子どもとの接し方、自分の親との接し方が目に見えるように変わっています。
by: J子 * 2005/07/26 07:24 * URL [ *編集] * page top↑
  ◆◆

J子さん、はじめまして♪

ご来訪&コメント、ありがとうございました(^o^)

ご主人、きっと何かこの本の中に、コツンと来るものがあったのでしょうね。
いい出会いだったんですね\(^o^)/

また、お暇なときにでもお寄りください。
お待ちしてます♪
by: そら * 2005/07/26 08:21 * URL [ *編集] * page top↑
  ◆◆

こんにちは。
突然失礼します。
東京都板橋区に本拠地を置く劇団銅鑼と申します。
重松清原作「流星ワゴン」舞台化のご案内です。
あの映画監督・行定勲氏も先日池袋公演をご覧になり、絶賛しました!!
2月3日~2月5日相鉄本多劇場(横浜)・2月9日兵庫県立芸術文化センター中ホール(西宮)で上演します。
公演の詳細は劇団銅鑼HP
http://www.gekidandora.com
をご覧下さい。
昨年東京で初演、高い評価を受け、口コミでSOULD OUTを出せた作品です。
お近くでしたら、是非ご覧下さいませ。
よろしくお願いいたします。

劇団銅鑼 制作 田辺素子
〒174-0064 東京都板橋区中台1-1-4
TEL:03-3937-1101
FAX:03-3937-1103
URL http://www.gekidanora.com
e-mail gekidandora@pop12.odn.ne.jp


by: 劇団銅鑼 * 2006/02/03 15:48 * URL [ *編集] * page top↑
  ◆◆

おっ!こんなところにまで出張、ありがとうございます♪
まぁ、よく探し出していただいた、って思います。
劇団銅鑼さんの公演が成功しますようにv-421
by: そら * 2006/02/03 21:43 * URL [ *編集] * page top↑
  ◆◆

こんばんは~。
この作品、色々な読み方ができる作品ですよね。
私の場合、親の立場になっていないので、というのがありつつも、カズと父との関係に共感するものがありました。
…一方で、ヒロの立場もよくわかったんですけどね(^^;)

重松さんの作品、これが2作目なのですが、「なるほど、こういう作品を書く人なんだ」というのもよく伝わってきました。
by: たこやき * 2007/03/04 00:45 * URL [ *編集] * page top↑
  ◆◆

たこやきさん、こんばんはっ♪
あ~、やっぱりカズとお父さんの関係が印象深かったですかぁo(^▽^)o
この作品、たこやきさんおっしゃるように、自分の立場によっていろいろ捉え方が違ってくるところがいいですよね。
>「なるほど、こういう作品を書く人なんだ」
と思っていたら、とんでもなかったりしてv-8
結構幅広い作家さんだと思います♪
by: そら * 2007/03/05 18:24 * URL [ *編集] * page top↑
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流星ワゴン/重松清
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「流星ワゴン」重松清とにかく、よかった。イイ読後感。読んだのも30冊を越えたけど、コレが一番イイ!死んでもいいと思った主人公がとある不思議な「ワゴン」で、人生の岐路に立ち、やり直そうとする。それにからむ、家族・生と死。簡単に言うと... 読書感想文 と ブツブツバナシ【2005/07/21 21:49】
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 「流星ワゴン」(重松 清著)【講談社文庫】  僕らは、友達になれるだろうか?   38歳、秋。 ある日、僕は同い歳の父親に出逢った。 死んじゃってもいいかなあ、もう・・・・・・。38歳、秋。 その夜、僕は、5年前に交通事故死した父子の乗る不思議なワゴンに 京の昼寝~♪【2005/09/25 22:22】
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著者:重松清 流星ワゴン価格:¥ 730(税込)発売日:2005-02 会社をリ たこの感想文【2007/03/04 00:47】
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