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「虚夢」 薬丸岳
2009 / 03 / 11 ( Wed ) 13:15:18
少年犯罪,性犯罪など重たいテーマに挑み続ける作者,薬丸岳が,
刑法第39条に挑みます。
…といっても私,この作家さんは初読みです。

★★★☆☆


「精神鑑定」に真っ向から挑む感動作!
「心神喪失」の通り魔犯に娘を殺された夫婦。運命を大きく狂わされた二人はついに離婚するが、事件から4年後、元妻が街ですれ違ったのは“あの男”だった……。(Amazonより)



感動というより,考えさせられる作品…を目指していたんじゃないかな。

【こちらの記事も♪】
higeruの大活字読書録




            


つい最近,統合失調症関連のマンガを読んだばかりだったので,
何というか,余計に複雑な気分になりました。

平穏な公園に,突然ナイフを持った青年が現れた。
次々と刺されていく罪のない人びと。
そこには,三上佐和子と愛娘・留美の姿もあった。
何人もの命を奪った青年・藤崎は,刑法39条のもと,
裁判を受けることなく数年間の病院生活の後,町に出る。

守ってやれなかった自責の念に押しつぶされそうな三上。
深刻なPTSDの後,自らも同じ病に冒された元妻・佐和子。

一方藤崎は寛解し,
キャバクラ嬢ゆきと心を通い合わせたかのようにみえたが。。。



この作品,精神鑑定のあり方とか,刑法の妥当性とか,そういう問題にまで踏み込んでいるように思えるのだけれど,
インパクトとしては弱い感じがありました。
ちょっと薄い感じというか,
考える材料は投げかけられているのだけれど,
ズシリとその重みを受け止めたって感じには至りませんでした。
何でだろう。。。
エンターティメントに走りすぎてた?
いやいや,エンターティメントだから悪いってわけじゃなし。
うーーーん。


佐和子の手記。

わたしは大きな疑問を持つようになりました。人を殺してしまっても法律的に許されるという精神状態を,他人である精神科医がどれほど見極めることができるのかということです。
…(中略)…一番憎いのは,わたしたちからすべてを奪った藤崎です。ただ,私の憎しみの矛先は藤崎だけにではありません。それは,刑法三十九条という犯罪被害者にとっては理不尽極まりない法律と,何の疑いも持たずにこの法律を存在させ続けている司法やマスコミや世間に対する憎しみです。
…(中略)…精神病を抱えている人たちの中で犯罪に走ってしまうのはごく一部です。ただ,重大な犯罪を犯しても不起訴や無罪になったりして,精神障害者は何をやっても許されると世間から恐れられることが,逆の差別につながっているのです。
刑法三十九条という法律があることで,精神障害者と精神障害をもつ犯罪者とを混同させてしまっているのではないでしょうか。



この作品,言いたいことはここに尽きると思います。

であれば,こうやってすっきりとした言葉で並べられてしまったのが,
なんかもったいなかったなぁという気がしました。
こういう思いに至った佐和子の「ぐじゃぐじゃ」にもっと焦点を当てていれば,
すんごく説得力のある…というか,
心に響くものになったんじゃないかしらん。。。なんて(^^;)

刑法三十九条「心神喪失者の行為はこれを罰しない。心神耗弱者の行為はその刑を減刑する」

…うーん。。。
この法律の前提として,まず「心神喪失者」や「心神耗弱者」の鑑定が明確でなければいけないよねぇ。

最近テレビで,「うつ」と「双極性うつ」の診断が難しく,誤診のために症状を重くしてしまう薬を処方されるという問題にあたり,直接脳内の血流を調べ,診断する方法が紹介されていました。
そのときは言及されていなかったけど,統合失調症もこういう診断が可能なような気がするんだけど。
精神鑑定も,そのような客観資料をもとに診断できれば,詐病か否かの区別ははっきりするんじゃないかなぁ。
どうなんでしょう?
精神鑑定のあり方に一石を投じるという意味で,
佐和子の計画,なかなかナイスだったように思います。
これ,現実に起きたら,精神鑑定もググッと進んだかもしれない…なんて思ったのでした。

それでも心神耗弱状態であったかどうかって判断は,その場での状況を再現するってわけにはいかないし,それって病理ではなく心理であるんだろうし,
精神鑑定にはグレーゾーンが残るんだろうなぁ。
どちらかというと,こっちのほうが厄介な気がする。

先日,裁判員制度導入に絡み,手話に新たな言葉を追加したという新聞記事を読みました。
その中で,「心神耗弱」と「心神喪失」が写真入りで載っていました。
ということは,もしかして裁判員になったら,そういう判断もしなきゃいけないってことだよね。
専門家にも分からないことが,素人に分かるわけないじゃんって気がしますが。。。
死刑か否かを決める場で,「分かるわけないじゃん」という要素が入っているのって,
ちょっと腰が引けてしまうなぁと思う,小心者の私。

また,「罰しない」「刑を軽減する」というのが,正しい判断なのかって話にもなるんだろうけど。
刑罰は何のために(だれのために)あるのかって話にもなるんだろうなぁ。
難しいことはよ~分からんけど,今のままでは再犯の危険性が高く,それが社会不安につながるんじゃないかなぁという気がしました。
この作品を読む限り,佐和子いうところの「精神障害をもつ犯罪者」が寛解状態を維持させるために必要な措置って,何もとられてないような。
今の「罰しない」は,病院に入院させて,病状が落ち着いたら普通に退院,それから先は通所施設へ移行ということになっているみたいだけど,
通所施設に通うのは本人の意思…なのかな。
藤崎みたいに放浪の旅に出ちゃったら,もうだれもフォローできない。
薬だって,飲み続けられるわけがない。
それじゃあねぇ。。。
大体もし精神障害をもっていなかったら,死刑だの無期懲役だの,結構重たい罪に問われていたに違いないんだもの。
それくらい長~く藤崎の心身状態を管理すること…ってできないのかなぁ。
藤崎は犯罪者なのだから,それくらいの縛りがあってもいいような気がするのですが。。。

この先,藤崎は何を覚えていて,何を感じてどんなふうに生きていくのかなぁ。

何だか一番気になったのでした。

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【薬丸岳】虚夢
 乱歩賞に「応募」するために仕事を辞めたという薬丸岳。いくら副賞1,000万円といえど、短編をちょこちょこ書くくらいで(ちなみにそのうちの一編はこれに収録)ちゃんと食えてんのか~、と他人事ながら余計な心配をしていたのだが、待望の新作である。  新刊予約のタ higeruの大活字読書録【2009/03/13 00:59】
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