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「秋の花」 北村薫
2009 / 09 / 02 ( Wed ) 14:59:52
ちえぞうさん,オススメの1冊。

推理小説でありながら,
人ひとりの命にとても丁寧な作品でした。

★★★★☆

幼なじみの真理子と利恵を待ち受けていた苛酷な運命――それは文化祭準備中の事故と処理された一女子高生の墜落死だった。真理子は召され、心友を喪った利恵は抜け殻と化したように憔悴していく。ふたりの先輩である〈私〉は、事件の核心に迫ろうとするが……。生と死を見つめ、春桜亭円紫師匠の誘掖を得て、〈私〉はまた一歩成長する。(Amazonより)



「眠りました」
ラストの一言に,胸を締めつけられます。。。


            

いきなりですけど,私,車の運転免許証を持っていません。
怖かったんです。もしかして,それで自分が人を傷つけたり,殺したり,してしまったらどうしよう。。。なんて。
それでも人の運転する車には喜んで乗るのだから,そういう気持ちって,エゴ以外の何者でもないのだけれど。
それから私,結婚前は子供なんて絶対いらない!と思ってました。
子供もね,やわくて,もろくて,すぐに死んじゃいそうで,怖かったから。
それがまさか3人も生んじゃうとはねぇ。わからないものです。

人を死に追いやろうなんてこれっぽっちも思っていなかったけれども,
結果,そうなってしまった。。。
過失致死…という罪は,私にはとても恐ろしく思えます。
人には非常に重たい十字架なのでは…と思っています。
何度も何度も「そのとき」を思い出し,何度も何度も「もしあのとき」と思い,でも現実を受け入れなくてはならなくて。

利恵…これから先,自分の人生を長く歩いていく中で,現実をどう消化していくのだろう。
これからの自分の幸せに臆病にならないで,生きて笑ってほしいけど。

読み終わって,まずそんなことを思いました。

「許すことは出来ないけれど,救うことはできる。救わねばならぬと思う」
円紫師匠が真理子の母親の気持ちを慮って言った言葉です。
「ねばならない」と義務のように思うかどうかはわからないけど,
私もきっと,救いたいと願うだろうなと思ったのでした。

この作品,大学生の「私」が主人公です。
大学生といっても,何だかとっても地味です。
どこか昭和の匂いがします。
もっと言ってしまえばレトロな感じ?
ついつい,むかーし読んだ川端康成の少女小説を思い出してしまいました。
(さすがに「お姉さま」とか「エス(S)」とかは,出てこなかったけどね)

真っ白すぎて,真っすぐ過ぎて,ちょっと直視できないというか,気恥ずかしいというか,
そんな気分になりました。


どうでもいいことなんですけれど,
主人公が友達と野菊の墓について議論しているシーン。

「私,結婚がどうこうっていうより,もっと別のことを考えちゃったの」
「というと?」


でプッと吹いてしまった私は,お笑い番組に毒されています(^^;)

主人公の「私」は,国文学科の学生らしく(?),言葉に対してとても感受性が強いです。
真理子の口癖から真理子の性格というかエネルギーの方向性を感じてみたり,
ざらつく言葉に違和感を感じたり。

以前に『スキップ』を読んだときには,色の表現がキラキラしていると思ったんですよね,私。
作者さんは,主人公の感受性も創造しているのかなと思ったのでした。

この作品,
真理子の死をミステリーの端緒だけにとどまらせることなく,
かといって主人公を突き動かす大きな動機とすることもなく,
1人の人間の死として,丁寧に描かれている…ように思います。
そこが大きな魅力だと思います。


「私」は真理子と利恵の先輩で,一,二回,先輩として会って話をしたことがある。
そんな程度のお知り合い。
このくらいの距離の人の突然の死は,ショックだけれど,日常生活が破綻するほどのショックではなく,当たり前の生活がごく自然に流れていく。
そんな日常生活の中で唐突に,真理子にもまだ流れたはずであった時間の前に
胸をつかれる思いでつい立ち止まってしまう。
人の死を悼むって,こういうことなんじゃないかなぁと思ったのでした。

「私」の話を聞いただけで,サラサラッと謎解きをしてしまう円紫師匠の登場や,
ミステリーとしてはかなり小粒な事件の真相など,
推理小説としてはどうなのという気もしなくはないのですが,
全体を流れる清冽な心持ちのおかげで,しみじみと,よい読後感を得られました。

そして,

「私たちって,そんなにもろいんでしょうか」と円紫師匠に聞いた「私」は,

「もろいです。しかし,その私達が,今は生きているということが大事なのではありませんか」
「それが本当にいいものならば,どこかに永遠に残るような気がするのです」
という円紫師匠の言葉に納得し,そういうものだと分かったような気になるのではなく,
自分なりの答えを一生をかけて探してほしいなと思ったのでした。

真っすぐ生きている「私」が到達したその言葉を,私は聞きたいと思ったのでした。

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  ◆◆

このシリーズ好きです。主人公と円紫師匠がとてもいい感じ。
by: 佐平次 * 2009/09/03 10:56 * URL [ *編集] * page top↑
  ◆◆

梟佐平次さん,こんにちはっ♪

> このシリーズ好きです。主人公と円紫師匠がとてもいい感じ。

うんうん。読みながら,梟さんのことを思い出してたよ。
以前にこのシリーズのことをお話しいただいていたと思う。
落語が入っていたりして,梟さん好みかも♪と思いました。

とっても「真っすぐ」で生真面目な感じもねっ(^_-)-☆
by: そら * 2009/09/03 18:00 * URL [ *編集] * page top↑
  ◆◆

こんばんは♪

おすすめ本を早速読んでくださったんですね。

>この作品,大学生の「私」が主人公です。
>大学生といっても,何だかとっても地味です。
>どこか昭和の匂いがします。
>もっと言ってしまえばレトロな感じ?
>ついつい,むかーし読んだ川端康成の少女小説を思い出してしまいました。
>(さすがに「お姉さま」とか「エス(S)」とかは,出てこなかったけどね)

(笑)レトロな感じといわれるとそうなのかなって思っちゃいます。
当時はそんなに違和感なかったんですけどね~w
そもそも北村さんの文章がレトロといえばレトロ?!かも。
北村さんはK部高校の国語の先生だったみたいですよ。
まだ北村さんが覆面作家で高校で教鞭をとっていた時期と
私が高校生だった頃が微妙に近いので。。。
この人の授業をうけたかった。。。なんて思ったりしました(苦笑)

たんたんと、本当にたんたんとですが、
こころにまっすぐ投げかけてくる感じが私はとても好きです。
by: ちえぞう * 2009/10/06 20:41 * URL [ *編集] * page top↑
  ◆◆

ちえぞうさん,こんにちはっ♪

早速読みましたぁ\(^o^)/

とても生真面目な作品だったなぁと思います。

> たんたんと、本当にたんたんとですが、
> こころにまっすぐ投げかけてくる感じが私はとても好きです。

しみじみと,じんわりと味わい深い作品でしたね(*^_^*)
普段刺激の強い本ばかり読んでいるけど,たまにはこういう作品もよいものだわ~♪
ちえぞうさん,オススメありがと~\(^o^)/

> 北村さんはK部高校の国語の先生だったみたいですよ。

あら,そうなん?どこかの高校の先生だったという話は知っていたけど。
息子に「K部高校,受けてみない?」とオススメしたい気持ちがむくむくと(*^_^*)
そんなにお利口さんじゃないけどね(^^;)

> この人の授業をうけたかった。。。

授業も美しい日本語だったのかなぁ。
ちょっと覗いてみたいよね♪
by: そら * 2009/10/07 15:18 * URL [ *編集] * page top↑
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