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「延長戦に入りました」
2005 / 12 / 16 ( Fri ) 09:13:37
7ページ程度のエッセイが34個入った本。
気楽に笑いながら楽しみました。

★★★★☆

奥田さんって、ご自分でも書いていらっしゃるけれど、
ホントど~でもいいようなところに目が行きます。
野球場に行って、案内嬢に注目してみたり、
レスリング選手のユニフォームは何で乳首が出ている中途半端なものなんだろうと思ってみたり。
何でそこかな~と思いながらも、にやにやしながら、そういえばそうだな~と奥田ワールドに連れていかれます。
日本人は故障が好きなのではないかとか、50メートル走が早かった子は大人になっても妙に自分に自信を持ってるとか、あ~、そうかも、なんて、にやけてしまいます。
爆笑してしまったのは、「13 鉄アレイと少年の肉体修業」。
奥田さんの涙ぐましい(?)肉体修業のあれこれを書いたものですが、
「バカは楽しい生き物である。」に大受けしてしまいました。
こうやって少年は大きくなっていくのだね。何だかほんわりと楽しくなったのでした。
実はここに書いてあること、うちのだんなの肉体修業(笑)とそっくり。ブルーワーカー、今でもクローゼットの横に立てかけてありますよ。
奥田さんが急に身近になったのでした。
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東京物語
2005 / 12 / 12 ( Mon ) 08:49:56
久雄の18歳から29歳までの東京での奮闘記。
元気をもらえる連作短編集でした。

★★★★☆

【あの日、聴いた歌 1980/12/9】久雄21歳。
久雄は大学を中退して、小さな広告代理店に入ります。会社の一番下っ端として、朝から晩までお昼ご飯も食べられずにあちらこちらをかけずり回っています。
その中で、ジョン・レノンが殺された日を描いた作品。
久雄は目が回りそうな忙しさの中、ジョン・レノンの死を知ります。
だけど久雄はそんなものにかまけている暇もないほど忙しい。
何だかね、昔とっても好きだった人のニュースを聞いても、すぐに反応できない久雄の、この気ぜわしさがよく分かるな~。
自分自身も、以前とは違う自分に、小さな満足があったりして。
1人のミュージシャンの死に揺れてしまう自分が気恥ずかしいような、そんな突っ張った自分がいるんですよね。

【春本番1978/4/4】久雄18歳。
大学に落ちて、東京の予備校に通うことになった久雄。
東京に出てきたその日の長い1日。
久雄の目には驚くことばかり。
標準語を話しているつもりなのに、「どこから来たの」と言われて、軽くショックを受けてみたり、地下鉄の路線図に頭がくらくらしてみたり。いつまでも田舎の風景にならない車窓に不安になったり。

大学に入ったとき、クラスメートの男の子が、しきりに自分の故郷の自慢話をしていたことを思い出しました。
彼もきっとこんな思いをしていたんだな。
私はずっと東京に住んでいたから、それが当たり前のように思っていたけれど、
ビルも地下鉄も、そうだよね~、びっくりだよね~。
そういえば彼も地下鉄は恐いと言っていたっけ。
久雄はとっても行動的。寂しさを抱えて1人で部屋に…なんてことはしない。

そのあふれんばかりのエネルギーが、すごく眩しかったです。

【レモン1979/6/2】田村久雄19歳。
大学生になり、久雄は演劇部に入ります。
サークル内の女の子、小山江里にさんざん振り回される1日。
江里、いいですね。
突拍子もなくて、豪快。だけどやっぱり女の子という感じがすごくいい。
こういう子は男の子にも女の子にも人気があるのよね。かわいいな。
久雄も女の子の機微に触れて、少し大人になったみたい。
このお話は、久雄も江里もとてもかわいくて、題名どおりレモンのみずみずしさが漂っていました。

【名古屋オリンピック1981/9/30】久雄22歳。
広告代理店でコピーライターとして充実した生活を送っている久雄。
大学を辞めて一足早く社会人になった久雄は、同じ22歳より少し自分が上ではないかと自信を持っています。
部下も2人できて、彼らの仕事のできなさ加減を見下したりもしています。
そんな、ちょっと天狗になっている久雄を、ガツーンと目覚めさせた1日。
久雄のすぐに突っ走って有頂天になってしまうところも、そして素直に自分を省みるところも、この人の魅力です。
単純といえば単純。真っすぐといえば真っすぐ。
彼の周囲にはそんな彼を育ててくれる大人がそばにいるんですね。
久雄、頑張れよ、と応援したくなります。

【彼女のハイヒール1985/1/15】久雄25歳。
2年前に会社を辞め、フリーランスのコピーライターになっている久雄。
まだ結婚なんて考えられない年なのに、名古屋の母は心配している。
母の陰謀でお見合いをさせられた久雄。
同郷の洋子さんを紹介されたが、彼女もまた嫌々お見合いに来ていたので不機嫌きわまりない。
そのお見合いの1日。
洋子のジェットコースターのような喜怒哀楽につき合わされた久雄。
彼女の機嫌につられて、久雄の気分もころころ変わります。
25歳。ちょっと前は結婚適齢期なんて言われていましたね。
だけどまだまだ洋子さんは夢を追いかけているんですね。
溌剌とした洋子さん、私も久雄と同じように、いいんじゃないのと思いました。洋子さんと結婚したら毎日大変そうだけど。
洋子さんと久雄、少し期待してしまいました(笑)

【バチェラー・パーティー 1989/11/10】久雄29歳。
あと数日で30歳になる久雄は、バブル景気の浮かれた世の中で、そこそこの成功を収めています。
とっくに結婚して、子供も1人、2人いるような、何となく思い描いていた自分の未来とは違う人生を歩んでいる久雄がいます。

「久雄はだれかに認められたかった。人の心を動かしたかった。会ったこともない、多くの人の心を。」「たぶん自分は、二十九歳にもなって、将来は何になろうなどと考えているのだ。」

久雄はまだまだ自分の可能性を信じています。

そんな久雄が、「青春は終わり、人生は始まる」気分になった1日を描いています。

ベルリンの壁が崩壊した日、久雄は「手近ですませた」恋人の理恵子の感傷に少しつき合い、大成功を収めている不動産屋(郷田)のいいようのない不安や孤独につき合い、結婚前夜になってあがいている友達(小倉)につき合います。

「長い一日だったな。吐息が漏れる。郷田に振りまわされて、小倉の胸のうちを聞いて、理恵子の可愛いこだわりの相手をしてー。でも悪くない一日だった。人の気持ちを聞くと、なんだかこちらまで癒された気がする。人と触れ合うと、勇気が湧いてくる。」

これこそが久雄の持つプラスエネルギーなんだろうと思います。
こういうふうに思える久雄がとても好き。
私も、久雄に会えて元気が出ました。
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野球の国
2005 / 12 / 01 ( Thu ) 15:26:56
アローンだがロンリーではなかった。奥田英朗の「地方の野球場で野球を見るぞ」の旅のエッセイ。

圏外

冒頭の言葉に、冒険家、植村直巳さんが、日本では孤独ではなかったけど孤立していた。南極で僕は孤独だったけど、孤立してはいなかったというようなことをおっしゃっていたことを思い出しました。

奥田さんのエッセイは初めてです。
この中で、野球のこと、球場のこと、そこに来ているお客のこと、映画のこと、今日の自分のいでたちのこと、食べたもののこと、昨日の睡眠時間、etc.etc...いろんなことを書いています。
さすが、ディテールにこだわると自らおっしゃるだけあって、
細部を細かく描写しています。
それがとてもおもしろい。
愚痴っていたかと思えば開き直り、何だかどこか、とぼけているんです。


彼が独身であることや、天王洲アイルに住んでいること。
小説を書くときは本当にプロットを立てずに書いていること。
どうやら子供がほしいとチラチラと思っているらしいこと。
結構繊細で不眠症に悩まされているらしいこと。だけど旅先だとよく眠れること。
ストレス性の肩こり腰痛が起きてること。

こんなこと、知らなければ知らないでもいいことなんでしょうけれど、
奥田さんの人となりが少しだけ垣間見えるようで、親近感倍増でした。

奥田さんは温かい風景に敏感です。
広々とした景色も、のんびりとした雰囲気も、お祭り騒ぎも大好きです。
いいな、こういう人。

山本がどうしたとかホッジスがどうしたとか、野球選手を全然知らない私にとってはちんぷんかんぷんでしたが、
球場で一喜一憂している奥田さんと一緒に、わくわくしてしまいました。
野球は球場で見ると、もしかしたらおもしろいのかもしれないな~と、認識を新たにしたのでした。

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「サウスバウンド」
2005 / 11 / 24 ( Thu ) 16:51:30
元過激派であった父の非常識な言動に振り回される小学生、次郎の成長物語、なのでしょうか。
小学生の視点から見た大人の世界が描かれます。

★★★☆☆

父一郎の非常識な言動や、それを支える思想に、こんな人、いまどきいるのかなーという感じも持ちますが、この作品の中では活き活きと描かれておりました。
奥田さんのパワーを感じてしまいます。

うん、読み物としてはおもしろかったです。
自分の感じ方に正直なお父さん、そういうお父さんのファンであるお母さん、せせこましい世の中にあって、爽快感もありました。

ただ、私は「壬生義士伝」をまだ引きずっているので(苦笑)、
どうもこの親の子供に対する無責任さに共感できなくて。。。。

子供は親の背中を見て育つと言いますし、次郎が両親のことをしっかり理解しているので、それはそれでいいとも、頭では思うのだけど。。。

やっぱり腹立たしさがこみ上げてくるのは押さえられない、かな。

まぁ、価値観の違いでしょうね。

西表島、いいですねぇ~。
そこでは、泣いてる中学生を見たら、きっと「どうしたの?」って聞いてくれるだろうな~。
もしかしたら、自分の家に連れて帰って、絆創膏の1つでも張ってくれるかもしれない。
そんなところで子育てしたいな~なんて思いました。

たぶん、自分だけ得をしようとする人がいないので、みんな親切なんだと思います。……人間は、欲張りじゃなければ法律も武器もいらないと思います。……もし地球上にこの島しかなかったら、戦争は一度も起きていないと思います。

これは次郎の手紙の一部です。人間のあり方をすごくシンプルに言っていると思います。

西表島にも、環境問題や開発問題、いろんな問題があるようです。
だから楽園のように思うのは間違いだと思うのですが、
こういう社会でありたいよな~なんて思いました。

お母さんがお姉さんと会話する場面。
「おとうさんとおかあさんは、人間としては何一つ間違ったことはしていないんだから」…「人のものを盗まない、騙さない、嫉妬しない、威張らない、悪に荷担しない、そういうの、すべて守ってきたつもり。」
…「世間なんて小さいの。世間は歴史も作らないし、人も救わない。正義でもないし、基準でもない。」


確かに、と思います。

お父さんが次郎に話す場面。
「……卑怯な大人だけにはなるな。立場で生きるような大人にはなるな」

これも、本当にそのとおりだと思います。

全編、そういうコツンとくるものがあるのだけれど、
どうもお父さんの行動やお母さんの行動に、?????がたくさん飛んだのでした。
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「ウランバーナの森」
2005 / 11 / 13 ( Sun ) 02:55:17
ジョン・レノンがオノ・ヨーコと息子ショーンとともに軽井沢に避暑に来ていた「充電期」を下敷きにした作品です。
ジョンへの思いが込められた作者デビュー作。

★★★★☆

その夏、精気のポップスター、ジョンは軽井沢で過ごした。家族との素敵な避暑がひどい便秘でぶち壊し。病院通いをはじめたジョンの元へ、過去からの亡霊が次々と訪れた。(文庫裏表紙より抜粋)

この作品は、「不適切な」親に育てられた子供の、心の彷徨と受容の物語のように思えました。
私にとって、とてもタイムリーなお話。
ジョンは母親を許せなくて、それでも母親に謝ってほしくて、
そして…というお話です。

大人になるということは、運命にやさしくなれるということ。
家政婦のタオさんが言います。
運命に優しくなれる。。。
子供は親を選べない。
それを恨む時期を過ぎ、ありのままを受け入れられるようになる。
そして自分が生まれてきたことを喜ぶことができるようになる。
ここまでの過程は、けれども大人になればだれもがたどることのできるものではありません。
運命に優しくなれない大人もたくさんいて、それぞれに苦しい思いをしているのだと思います。
ジョンがすべてを丸ごと受容する機会を得たことに心打たれますし、
あの子にも、この子にも、そういう奇蹟が起きますようにと願わずにはいられませんでした。


それにしても作品中のジョン、彼の気持ちを大きく憂鬱にしているのが、「今日も便秘だ」というものなのです。
なので尾籠な話が延々と続きます。
この辺を下品ととるか、ユーモアととるか、読者によるかもしれません。
私は、結構さらっと読めましたけど。
かのジョン・レノンのイメージとはかけ離れていて、けれども人間くさくて、ちょっと親しみが持てたりしました。
出てくる精神科医は伊良部先生ではなかったけれど、
伊良部先生がジョンを診ていたら、どんなふうにジョンと接しただろうと、興味がむくむく湧いてきました。

作中、心に届いた言葉の数々はこちら↓
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「マドンナ」奥田英朗
2005 / 08 / 12 ( Fri ) 10:43:18
どこかにいそうな40代サラリーマンの心の機微を描いた短編集。
読後、爽やかな風がひと筋吹き抜けます。

★★★★☆

「マドンナ」営業三課の課長、荻野春彦は、人事異動でやってきた倉田知美に淡い恋心を抱く。

「ダンス」大手食品会社営業四課課長の田中芳雄は、息子俊輔がダンサーになると言い出した。「おれと違う価値観を持つやつ」に対して芳雄は。。。

「総務は女房」大手電機メーカー総務部第四課課長、恩蔵博史は、異動早々、改革を断行しようとしたが。。。

「ボス」鉄鋼製品部第一課課長田島茂徳のところへ新部長がやってきた。浜名陽子、女性部長。ヨーロッパ仕込みの彼女は次々と古い慣習を打ち破る。会社人間であった田島は大いに反発してみるが。。。

「パティオ」営業推進部第一課課長鈴木信久は、悠然と1人を楽しむ老人と出会う。

皆さん、課長さんなんですね。
40代サラリーマンというと、課長さんの年代なのでしょうか。
課長というとひどくおじさんのように思えるけれど、
ふと気づくと同年代。。。
知らないうちにもうこんなところまで来ていたんだと、軽いショック。


この短編集は、初出が2000年11月ですから、5年前の作品です。それほど昔ではないのだけれど、
何というか、皆さん、いろいろあるけど元気です。
エネルギーが枯れ果ててはいないというか。
家庭でも会社でも、思い通りにいかないことは多いけれど、ほんのりうるおいが残っています。

世の中の矛盾に怒ったり、恋をしたり、違う価値観を尊重してみたくなったり、人との心の交流にしみじみしたり、
幾つになってもそんな気持ちを持っていたいと、くすぐったくそんなことを思いました。

5編の中では「マドンナ」が好きです。
主人公、荻野さんは、倉田知美をただ見ているだけでときめいて。生活にも張りなんかが出てきたりして。
奥さんはそんな荻野さんを冷静な目で判断し、どんと構えていてくれます。
本人は一生懸命なんだけど、何ともおかしみがあふれています。


全編、作者の目線が暖かいです。
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「最悪」奥田英朗
2005 / 07 / 06 ( Wed ) 14:06:22
この方の新作、「サウスバウンド」が新聞広告に載っていました。
元過激派の父親を持つ小学6年生が主人公だとか。
「ビルドゥングロマン」なんだとか。(何だ?)
よく分からないけど、おもしろそうです。

ということで奥田さんを思い出したので、
「邪魔」の前に読んだ「最悪」を。
とにかくどんどん悪いほうへ転がる転がる。
そのスピード感がたまりません。

★★★★☆

>不況にあえぐ鉄工所社長の川谷は、近隣との軋轢(あつれき)や、取引先の無理な頼みに頭を抱えていた。銀行員のみどりは、家庭の問題やセクハラに悩んでいた。和也は、トルエンを巡ってヤクザに弱みを握られた。
無縁だった3人の人生が交差した時、運命は加速度をつけて転がり始める。
(文庫本の裏表紙より)

けれども3つの人生が交差するのは分厚い本の3分の2を過ぎたあたりからです。
それまでは、ただもう最悪に最悪を塗り重ねていく3人がそれぞれ個別に描かれます。
3人の中では川谷さんの描写が秀逸。
彼がだんだん追い詰められていく姿に、こちらまで心臓ドキドキ、息苦しくなってきます。
うわ~、どうするのさ~の展開からラストまで、川谷さんから目が離せませんでした。

ラストはジェットコースターの最後のように落ち着くべきところにゴールしたという感じがあり、
いい感じでクールダウンできました。

読み終わって、どこかすっきりしたものを感じていました。
最悪な話のはずなのに後味がいい、何とも不思議な本でした。
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「空中ブランコ」奥田英朗
2005 / 06 / 14 ( Tue ) 17:29:32
奥田英朗をもう一つ。
これは3月に読んでます。

★★★★☆

「イン・ザ・プール」でおなじみの伊良部先生が登場します。
先生のトンデモぶりは周知の事実。
だから何があってもそれほど動じず(?)
読むことができました。

一番最後の「女流作家」では思わず涙が。

ちゃんと先も読めていたのに、
マユミに泣かされるとは思いませんでした。

この作品も前作同様、読むとなぜか元気になります。

だれだって
心に大きな荷物を抱えている。
だけどちょっと肩の力を抜いてみようよ、
伊良部先生にそんなことを言われているようでした。
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「イン・ザ・プール」奥田英朗
2005 / 06 / 14 ( Tue ) 17:25:13
「砕かれた鍵」はまだ途中。
ちょっとお休みして、今日は今年読んだ本の中から。
「イン・ザ・プール」は1月に読んだ本。

★★★★☆

この間のテレビでは伊良部先生は阿部寛さんが演じていましたが、私は西田敏行のイメージでした。

最初、とんでもない先生って思っていたんだけど、
読み終わって、うん、いい先生じゃないかって思いました。

「ストレスの原因を探るとか、それを排除する工夫を練るとか、そういうの、ぼくはやんないから」

「ストレスの元など、へたに探そうとしないことだね。どのみち心身症になるような人間は、思い当たったところでそれを根絶するわけにはできないわけだから。」

「生い立ちがどうだとか、性格がどうだとか、そういうやつでしょ。生い立ちも性格も治らないんだから、聞いてもしょうがないじゃん」

私は伊良部先生の、ストレスの原因は探らない、
過去のトラウマにも目を向けないという方針、
すっごく好きです。
ふっと身が軽くなるような、そんな感じがします。
私が今、ぐちゃぐちゃと考えている「これ」を、
伊良部先生に聞いてもらったら、何て答えるかな~。
「そんなの、どっちでもいいじゃん。」
って鼻でもほじられそうだな~。
そんなこと思っていたら、何だか少し、楽観的に考えられそうな気がしてきます。
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「邪魔」奥田英朗
2005 / 06 / 03 ( Fri ) 23:58:21
★★★☆☆

及川恭子(34)は、夫の会社の放火事件をきっかけに、とんでもない方向に走り出す。

久野薫(36)は、刑事としての職務を果たしながら、真実に向き合わざるを得なくなる。

平凡な日常にちょっとした「邪魔」が入ることで、思いとはかけ離れた方向に押し流されていく人たちを描いた作品。

相変わらずのスピード感、細かいところまで描き込むことによって生まれるリアリティ、
そししてラストにはきっと爽やかなものが得られるであろうという作者に対する期待感、
そんなものが相まって、文庫本上下巻を何かに急かされるように読みました。

読み終わって、ラストが落ち着くべきところに落ち着いていない
すっきりしない感じが残りました。

主婦及川恭子、これでいいのか????

解説によると、奥田英朗という作家さんは、「テーマやプロットは二の次でディテールが命」という考え方で
登場人物の登場の仕方だけを設定して、あとは登場人物が動くのに任せる作り方をしているのだとか。

なるほど、そう思って及川恭子を見てみると、
彼女は作者の意図を超えた存在になってしまったのではないかという気がしてきます。

作者の意図なんかを蹴飛ばして、勝手に動き回る登場人物。
感情も論理も何もかもが破綻していて、理解不能な登場人物。
読んだ直後はただ腹が立つばかりであった及川恭子が、
だんだんと「追い詰められた人間ってそんなものなのかもしれない」と思えてくるから不思議です。

最初から気になっていた久野さんは、
その心の空隙が悲しく、寒く、切なくて、
胸が締めつけられました。

実は読み終わった当初は★★ぐらいにしか思っていなかったこの作品、
今は★★★★ぐらいに感じています。

「途中まではよかったけれどラストがね」という感想から、
「ラストは納得できないけど、それ以外はよかったかな」という見方に変わってきているのかもしれません。
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